「ゆかりさん…すみません。
俺…なんだか眠くって……
久しぶりにがっつり働いたせいかな。
明日も早起きですし……」

そんなのはもちろん言い訳だ。
ただ、美戎の話をしたくなかっただけ……



「あ……そうだったな。
すまない。」

「……じゃあ、おやすみなさい。」



狭い部屋ではすでに小ヨウカイ達がすやすやと穏やかな寝息を立てていた。
奴らの寝ている端っこと端っこに、布団が一つずつ。
俺はその一つにごろんと横になった。
身体を丸めて、壁の方を向いて……
反対側の布団が、ゆかりさん用だ。
ゆかりさんもすぐに部屋に来て、ランプの明かりを吹き消した。



「おやすみ。」



誰に対して言ったのかわからないゆかりさんの言葉に、俺は返事を返さなかった。
情けない……まるで、拗ねた子供みたいだ。
何となくイライラして気分が悪い……疲れてるけど、きっと今夜は眠れない。
……そう思ったけど、俺はいつの間にか眠りに就いていた。









「……太郎……
…慎太郎……」

「……ん?」



身体を揺り動かされて目を覚ますと、そこにはゆかりさんの緑色の顔があった。



「あ、お、おはよう。」

きっと、今までなら、目が覚めた途端にかっぱの顔なんて見たら、起きた途端に絶叫だ。
だけど、最近は、すっかり慣れてしまってる。



「急がないとまずいだろ?」

「あ、は、はい。」



ゆかりさんが小声なのは、きっと小ヨウカイ達を起こさないためなんだろう。
窓の外は、まだ暗い。
時計がないからよくはわからないものの、でも、雰囲気的に、そろそろ準備をして出かけないといけない時間だ。
やっぱり、久々の労働で疲れていたらしく、俺は爆睡していた。
ゆかりさんに起こしてもらわなかったら、きっとまだまだ寝てたと思う。

台所にはすでに朝食の支度もしてあって、身支度を整えた俺は快適に仕事に向かえる状況にあった。



「じゃあ、行ってきます。
あいつらのこと…よろしくお願いします。」

「あぁ、わかってる。」



ゆかりさんは、僕が出ていくのをずっと手を振りながら見守ってくれる。




やばい……!
なんだか、ゆかりさんのことが本当に好きになりそうだ……

俺は、そんな想いを振り払うかのように、頭をぶんぶんと振り回した。