(あぁ、疲れた……)



畑に着くなり働かされて、夕方までほとんど休むことなく黙々と畑仕事に精を出し、ぐったりと疲れた身体を引きずりながら、俺はようやく家路に着いた。
もらって来た出来の悪い野菜の重みがずっしりと肩に食い込むけど、このおかげで食費もずいぶんと助かるんだから、そんなことは言ってられない。。
考えてみれば、今までは仕事が忙しいとか大変だとか言ってはいても、これほど疲れることなんてなかったかもしれないな。
そりゃあ、気疲れみたいなものはあったけど、こんな風に体力の限界まで身体を使うことなんて、高校時代の部活以来なかったことだ。
きっと、こういうのが、本当の「疲れた」なんだろうな。
そんな取り止めのないことを考えながら、俺は程なくして小屋に着いた。



「お帰り。」

扉を開けるなり、そんな声をかけられ、俺は一瞬戸惑った。



「あ…た、ただいま。」

そこにいたのは、ゆかりさんと4人の小ヨウカイ達……
冷静に見れば、かなりおかしな状況だけど、俺は自分でも意外な程、胸が熱くなるのを感じた。
だって、このシチュエーションは、まさに、温かい家庭の雰囲気じゃないか?
ただ、奥さんがかっぱで、子供達がヨウカイだってことだけで……



「夕飯の用意が出来てる。
子供達も腹空かせてるから、早く食べようぜ。」

「は、はい。」



そういえば、なんだか良いにおいがしてる。
疲れて帰って来ても、家族の誰も出てきてくれず、自分で鍵を開けて家に入る…なんて話をよく聞くけれど、俺の場合、みんなで出迎えてもらえて、しかも、夕飯の支度まで出来てるなんて……



今の俺の気持ちを文字で表すとしたら「じーん」だ。
男って単純だな。
こんなことで、さっきまでの疲れが一気に吹き飛ぶんだから。
俺は、込み上げて来る喜びに頬が緩むのを無理に抑え込んだ。