「じゃあ、行ってくる。
なにかあったら、畑の方に来てくれよな。」

「うん、わかった。
慎太郎さん、頑張ってね!」



次の日の早朝、俺は小屋を後にした。
みみでか達は、まだすやすやと眠っていたから、あとでゆかりさんに連れて来てもらうことにした。
これからしばらく、俺は、畑の傍の小屋でゆかりさんやみみでか達と一緒に暮らすことになる。
ゆかりさんにはみみでか達の面倒をみてもらわないといけないから。
ただ…相手はかっぱとはいえ女の子だ。
いまだ実家住まいで、一度も女性と一緒に暮らしたことがない俺としては、ちょっと緊張する。
今までは美戎がいてくれたからまだ良かったけど、これからは二人っきりなんだから。



確かに最初は初めてのかっぱってことでびっくりはしたけれど……
仕草だったり、雰囲気はやっぱり女の子なんだよなぁ……
だから、意識してしまうのかな?
いや…恋愛対象とかなんとかいうことじゃないぞ。
いくらなんでも、かっぱにそんな気持ちは抱かない。



(あれ……?)



そういえば、この世界にはヨウカイと人間がいるわけだけど…人間とヨウカイの恋愛なんてあるのかな…?
かっぱはともかく、例えば、この前のさむいもなんかは言われなかったらヨウカイだとはわからない程、人間に近いから、ああいうタイプのヨウカイだったら、もしかしたら……
そういえば、昔話にもそんな話があったぞ。
雪女だったかなんだかと人間が結ばれて、子供まで生まれるって話が……
じゃあ、やっぱりこの世界でもそういうことはあるのかなぁ…?



そんなことを考えながら、俺は少しずつ明るくなっていく空の下を畑に向かって歩き続けた。