「わ、わ、わ……」



気持ちは悪いが、こんな風にされたら無下に足を動かすことも出来ず…
俺は、ビビりながらその場に立ち尽す。
……っていうか、だから、何なんだよ、こいつ…!?



「おぉ、あしでかが出たようじゃな。」

「あ、あしでかって…?」

老人はもったいぶるように大きな咳払いをひとつすると、落ち着き払った顔をしてこう言った。



「この世界では旅をする者は供として妖怪を連れて行くことになっておる。
なんせ、物騒な世界じゃからな。
人間だけでの旅は危険なのじゃ。
妖怪とおぬしは一心同体。
つまり、おぬしはたった今からこの妖怪の保護者となった。
大切に育てるんじゃぞ。」

「…………は?」



きっと、今、この瞬間……俺の目は点になっていることだろう。



は?
妖怪?
保護者?
…………はぁ?



「しかし、残念じゃったのう…
あしでかとはのう…
レアじゃったら、一気に元の世界に戻る程の神通力を持ってるヨウカイじゃったかもしれんのに……」

半笑いの老人の顔が、やけに俺の癇に触った。



「嘘吐くな!
どうせ、こんなのどれもこれもろくな妖怪なんて入ってないんだろう!
なにがレアだ!」

「あ、な、なにをする!」

頭に血の上った俺は、他の二つの木の実を次々と割ってやった。



「みみでか~~」

「はなでか~~」



そんなこと言わなくてもみりゃわかる。
木の実から出て来たのは、やたらと耳のでかいやつと、やたらとはなのでかい奴なのだから。
みみだかとはなでかも、あしでかと同様に俺の足にへばりつく。



「ほら、見ろ!
この中のどれがレアだって言うんだ!
みんながらくたばっかりじゃないか!」

「……なんということを……」

老人はそう呟き、憐れみのこもった瞳で俺をみつめた。