「こんなところに温泉があるなんて、びっくりだね。
あ…タオルないけど…ま、いっか。」

俺に言ってるのか、独り言なのか…曖昧なことを話しながら、美戎は素早く服を脱いでいく。



「慎太郎さん、早く!」

「あぁ、う……うっ!!」

俺がふと顔を上げると、そこには全裸の美戎がいて……
俺の視線は、思わず奴の一点に釘付けになり、言葉を失ってしまった。



「……慎太郎さん?
どうかしたの?」

「い、いや…なんでもない。
すぐに行くからおまえ先に行ってろ。」

「そうなの?じゃあ、先にいっとくね。」



な、な、なんだ?
あいつ外人か!?
なんであんな立派なモノを…
しかも、あの身体…何なんだ?
腹筋が綺麗に割れて……
お尻も上がってるし、肌はすべすべだし、どんだけ綺麗な身体なんだよ!!




(……それに比べて、この俺は……)



筋肉が見当たらない…
腹は出てるし…けっこう毛深いし…
これでも、こっちに来てから多少は引き締まったはずなのに、美戎とはくらべものにならない見苦しい酷い身体だ。




どうしよう…?
……逃げるか?
……いや、ここまで来て逃げた所でなにがどうにかなるってもんじゃない。
これほど勝敗がはっきりしてる戦いなら、却って清々しいってもんだ。




(ええい!)



俺は、覚悟を決め、温泉に向かった。



小屋の戸を開けると、そこは意外にも露天風呂だった。
幸い、美戎は、俺に背を向けて温泉に浸かっていた。
それを見た俺は、素早くお湯の中に身を沈める。



「あ、慎太郎さん。
気持ち良いねぇ……」

「そ、そうだな。
……それはそうと……」

「……何?」

「あの…おまえ…その、なんでそんなに筋肉が……」

俺は気になっていたことを美戎に訊ねた。



「あぁ、そのことか……
早百合さんから言われてるんだ。
体脂肪は常に10%以下にしとくようにって。」

「じ、10%だってぇ!?」



確か、俺…30%を超えてたような……
ここに来てからは、多少下がってるはずだけど…それにしたって、10%以下なんてなったことないぞ。




「最近、サボってるから、またトレーニングしなくっちゃ。」



美戎の洗脳は相当なものだ。
早百合という女から離れてても、美戎はずっと早百合の言いつけを守ろうとしている。
こいつを立ち直らせるには、相当骨が折れそうだ。