な、なんてことだ…!
やっぱり、美戎は悪いやつに利用されてるんだ。
当の美戎はあほゆえに、もしくはマインドコントロールのせいで、利用されてることにも少しも気付いていない。

もしかしたら、早百合やばあさんは黒い組織の一員なのかもしれない。
じいちゃんもなんでそんな奴らに関わってしまったんだ。
一日一万なんていいながら、そこに危険手当だとか成功報酬だとかいろんなオプションが追加されて、俺が戻った時には何千万にもなってるのかもしれないぞ…




(……大変だ!)




早く戻らなきゃ…!
そして、戻ったらすぐに然るべき所に助けを求めて、それから、美戎をその女から切り離さなきゃ…!
うちは狭いからちょっと無理だけど、じいちゃんの家で暮らせるようにしてもらおう。
そうだな…俺もしばらくはじいちゃんの家に行くか。
じいちゃんだけに、美戎を押し付けるわけにはいかないもんなぁ…
俺がいつ元の世界に戻れるのかはわからないけど、こんなに長い間無断欠勤してたらどうせクビになるだろうし、じいちゃんの家の傍で美戎と一緒にバイトでもして……




「……太郎さんってば!」

「え!?何か言ったか?」

「もうっ…!
どうしたんだよ。
急に黙り込んで固まってるから、びっくりしたよ。」

「あ…あぁ、悪い。
ちょっと考え事してたんだ。」

「じゃ、今の話、聞いてないの?」

「えっと……すまない!
もう一度話してくれ。」



美戎は不機嫌な顔で小さな溜息をひとつ吐いて、そして、ゆっくりと話し始めた。



「だから~…
僕…天国に行って、早百合さんを裏切っちゃったわけじゃない。
そのことを正直に言うべきかどうか悩んでるんだよ。
……慎太郎さんはどう思う?」

「あのなぁ、美戎…その早百合さんって人は……」

早百合は、実はとっても悪い奴なんだ。
おまえを利用してるだけなんだ…と、言いかけて、俺は気が付いた。
そんなこと言った所で、きっと美戎は俺の話なんて信じないだろう。



「そりゃあ話した方がいいな。
好きな人に嘘を吐くのはとても悪いことだから、絶対に話すべきだ。
おまえが天国でどんなことをしたか、包み隠さず全部話すんだな。」

話せばきっと早百合は怒って、美戎にひどいことをするだろう。
その時に警察に踏み込んでもらったら、早百合は間違いなく捕まるはずだ!



(美戎…俺が必ずおまえを救ってやるからな!
おまえの目を覚まさせてやる…!)



俺は、自分でも少し戸惑うほど、熱い心をたぎらせていた。