「美戎…そろそろ俺もお金がなくなって来たし、この町でしばらく働いてこの先の路銀を稼ごうと思うんだ。出来ればおまえにも働いてほしい。
それで、美戎…おまえは今までどんな仕事をしてたんだ?」

「僕、働いたことはないよ。」

「えっ!?ずっとニートだったのか?」

「うん。」



美戎は悪びれた様子もなく、元気に頷く。




「なんでだよ。
なんで働かなかったんだ?」

「僕は家の外に出ちゃいけないから。
っていうか、部屋から出ることも許されてなかったんだ。」

「なんだって?」



どういうことだ?
家の外に出られないなんて…もしかして、こいつ、見た目よりもずっと頭が弱いのか?
それで、親が外に出さなかったとか…?



「親が出ちゃだめだって言ったのか?」

「ううん、早百合さんだよ。
早百合さんの言うことは絶対に守らなきゃいけないんだ。
でも、早百合さんがいない時はおばあちゃんの言うことを聞かなきゃいけないんだ。
それで、おばあちゃんがお客さんのいない時なら部屋を出て良いって言ってくれて、それからごはんを一緒に食べるようになったんだけど、ここに来られたのはおばあちゃんが慎太郎さんを助けておいでって言ったからなんだ。」



こいつは何を言ってるんだ?
よくわからないけど、とにかくそのおばあさんと早百合さん……早百合さん…?



「美戎…早百合さんって誰なんだ?」

「早百合さん?早百合さんは僕の一番大切な人だよ。
おばあちゃんは早百合さんのおばあちゃんなんだ。」



ってことは…美戎は早百合とかいう女と暮らしてて、その女が束縛が激しくて美戎を半ば監禁している…そういうことなのか?




(……まさか!)



「美戎…おまえ、その早百合さんって人やおばあさんから暴力を受けたり酷いことをされたりしてるんじゃないのか?」

「そんなことないよ。」

「なにか変な注射をされたりしたことはないか?」

「ううん、僕、一度も注射したことないよ。」



……心配だ。
美戎は、マインドコントロールでもされてるんじゃないだろうか?
なんだかちょっとぼーっとしてるところがあるし、その早百合とかいう女に良いように操られてるんじゃないんだろうな?



「なぁ、美戎…おまえは本当に俺を探しに来るのは無報酬なんだな?」

「うん。全然もらってないよ。
……ただ、僕の貸し出し料は一日一万円だっておじいちゃんに伝えるようにって、おばあちゃんが……」

「な、なんだってぇ!」