「えーーーーーっっ!」



や、やっぱり、こいつはろくな奴じゃない!
見た目通りのチャラい奴だ。



「おじいちゃんと東京でキャバクラに行った時も天国だって思ったけど、ここの天国はもっと天国だったんだ……」

「な、な、なんだって!
じいちゃんと東京のキャバクラ…?
何なんだ、それ?
じいちゃんは俺を探してたんじゃないのか!?」

「うん、そうだよ。
東京は、僕がどうしても行ってみたかったから、一日だけ観光しようって頼んだんだよ。
ほら、この服も原宿で買ってもらったんだ。
原宿のヴィジュアル系のお店だよ。」



美戎は、屈託のない笑顔で無邪気に話す。



どうなんだろう…?
こいつは、そのまんま本当に馬鹿なだけなのか、それとも、そんなのはただの演技で、本当はしたたかな奴なのか…?
きっと、じいちゃんは藁にもすがるような想いでこいつに俺のことを頼みこんで…
だからこそ、東京観光がしたいとか、キャバクラに行きたいと言われたら、その通りにしてやったんだろうな。



でも……どうして、じいちゃんはこんな奴に、そんな大変なことを頼んだんだろう?
ここがどんな所かもわからないんだ。
普通なら、もっと体力のありそうな奴に頼まないか…?




(……はっ!)




ま、まさか、じいちゃん……
美戎があほなのをいいことに、うまくまるめこんでこっちに送り込んだんじゃ……

そうだよ…
普通だったら、そんなこと、頼まれたって断るんじゃないか?
大袈裟に言えば、生きて戻れる保証もないような所なんだから。

ってことは……
やっぱり、美戎はあほだから何だかわからないうちに送り込まれたか、もしくは……



法外な金を取った…?




「なぁ、美戎…下世話なことを聞くけど、ここに来る条件みたいなものはなにかつけたのか?」

「条件…?」

「まぁ、たとえば、お金とか……」

「ううん、ないよ、そんなの。」



美戎が嘘をついてるようには思えなかった。
……ってことは、やっぱりこいつはあほで、じいちゃんに都合良く使われたってことなのか…?
だとしたら、ちょっと可哀想だよな。
キャバクラや服…あとはスマホか…
それだけで、引き合うようなことじゃないだろ。
でも、こいつはそんなことにも気付いてないんだよなぁ……



そう思うと、俺は美戎のことが急に不憫に思えて来た。