(これだから、アホは困る……)



「美戎、もうちょっとわかるように話してくれないか?
こんな大きなものがどこに入ってたっていうんだ?
おまえは、ドラのすけの四次元リュックでも持ってるとでもいうのか?」

「ドラのすけ?
四次元リュック?
……なんだ、そりゃ?」

ゆかりさんが、俺の世界のアニメを知ってるわけがない。
でも、美戎は知ってるはずだ。



「あぁ、そういえばそれに近いかも……!
こっちでは、無限袋って言うんだって。」



なんだなんだ?
何がそれに近いんだ?
無限袋って何なんだ?



「無限袋って……」

「さぁ、出来た。
とにかく、まずは朝飯を食べようぜ。
慎太郎、そこ、開けてくれ。」

鍋を抱えたゆかりさんに言われるまま、俺は小屋の扉を開けた。
部屋の中は三畳程度だろうか。
小さなちゃぶ台と布団が一組……
布団は、なんだかやけに乱れてる……



それを見ているうちに、俺の頭の中にいやな妄想がわきあがった。



(……ま、ま、ま、まさか!!……美戎の奴……ゆかりさんと……!?)



いや、そんなことがあるはずがない。
ゆかりさんは女の子とはいえかっぱだぞ。
いくらなんでも、そんなことは……



でも、身体の大きさ的には人間の女の子とほとんど変わらない。
背中には甲羅のようなものがあるにはあるが、他のところがどんなふうになってるのかはわからない。
なんせ、ゆかりさんはノースリーブのワンピースのようなものを着てるから。
そういえば、今までに出会ったヨウカイはけっこうみんな服を着てるな。
籠屋は着物っていうか、行者みたいな服装をしてたし、さむいもは言われなきゃヨウカイだなんて思えない。
いや、俺の世界の人だって言われても信じてしまいそうなポンチョを着てたし、考えてみれば裸っていったら、うちのあしでか達だけだ。
……って、そんなことはどうでも良い。
美戎はいかにも軽そうっていうか遊び人風だし、好奇心も強そうだから、ゆかりさんとそういうことになっても不思議はない…




あ~あ…ヨウカイもやっぱりイケメンには弱いってことか……ゆかりさんって硬派な雰囲気なのに、意外と軽いんだ…なんだか、がっくりだな。
俺は、気持ちがずどんと沈み込んでいくのを感じた。