(ま…町だ……)



結局、一睡もしないで俺は真っ暗な闇の中をただひたすらに歩き続け……
空が明るくなって、近くに町が見えて来た時には、安心感に思わず胸が熱くなった程だ。
金もなく、食べるものもなく、なかなか泣き止まないあいつらを背負っての道中は、本当にきつかった。



(ほうら、もうすぐ町に着くぞ。
町に着いたら、何か食べさせてやるからな。)



俺は背中のあいつらに向かって、心の中でそう呟いた。



あの町はけっこう大きな町らしいから、しばらくそこで働いてお金を稼ぐのも良いかもしれない。
お金はあとわずかしかないんだ。
ゆかりさんも美戎もとにかくものすごい大食いだし、今あるお金はきっと数日ももたないだろうから。



でも、そんなことよりもまずは休みたい。
肩も背中もバリバリだ。
本当なら熱いお風呂にでも入りたい所だけど、お金がないから宿屋には泊まれないし、しばらくは無理だろうなぁ……
ま、贅沢は言えないさ。
美戎やゆかりさんだって、昨夜は野宿だったんだ。
幸い、雨は降らなかったけど、二人も大変だっただろうな。



そんなことをあれこれ考えながら、俺はようやく町にたどり着いた。







「な、な、な、なんだ、これ?」

「あ、慎太郎さん…早かったね!」

「早かったじゃないだろ!
なんで、迎えに来なかったんだ!」

「あぁ、ごめんね。
籠屋さん、お得意さんからの呼び出しがかかっちゃったみたいで……」

美戎は特に悪びれた様子もなく、さらっとそんなことを言う。
言いたいことは山ほどあったが、疲れすぎて、もう文句を言う元気もなくなっていた。



広場の隅っこにはなにやら取って付けたような場違いな小屋があって、その前でゆかりさんと美戎がご飯支度をしていた。
どうやら、やつらは昨夜この小屋に泊まったようだ。



「あ、これね…おじいさんがくれた旅人セットに入ってたんだ。」

「旅人セット…?」



それなら、俺ももらったぞ。
でも、中には数回着たら破れそうなぺらぺらのおかしな服と、何かの膏薬みたいなものと丸薬と…あと、手帳みたいなのも入ってたな。
何て書いてあるのかは読めなかったけど、きっと日記みたいなものを書き留めておくもんじゃないかと思う。
もちろん、こんな小屋が入ってるはずも……



(……ん?入ってた??)



こんな小屋がどこに入ってたっていうんだ?
小さいとはいえ、材料だけでもかなりなもんだぞ。
一体、こいつは何を言ってるんだ?