「じゃあ、そろそろ寝ようか。」

「あ、あたいは…外で寝るから。」

「遠慮しなくて良いよ。
狭いけど、三人くらい寝れるから。」

「で、でも……」



ゆかりさんは、なぜだか部屋に入りたがらなかったけど、女の子を野宿させるわけにはいかない。
僕は無理にゆかりさんを部屋の中に押し込んだ。



「ゆかりさん、どっち側に寝る?」

「あ、あ、あたいは、ここで良いよ。」

そう言うと、ゆかりさんは部屋の片隅に座り込んで身を縮めた。



「布団も狭いけど、くっついて寝れば三人くらい寝れるよ。」

「い、いいんだってば!
あたいには甲羅が付いてるから、横になると眠りにくいんだ。
特にそういうふかふかした布団は……」

「そうなの?……じゃあ……」

僕は布団を部屋の片側にひっぱった。
布団の下は畳に似た麻みたいなものだから、それだったらゆかりさんにも良いかと思ったんだ。



「さ、ゆかりさん、ここに寝て。」

「あ、ありがとう。」

ゆかりさんはようやくそこに来たけど、横にはならずになんだそわそわしてる。



「さ、でかめも……」

「あ、でかめはこっちだ。」

僕がでかめを壁側に寝かせようとしたら、ゆかりさんがでかめを引っ張ってそれとは反対側に寝かせて、それから、ゆかりさんもでかめに寄り添うように横になった。




「じゃあ、明かりを消すよ。」

「あ、明かりはあたいがあとで消すから……」

「……そう?わかった。」



「ねぇ、ゆかりさん…ゆかりさんは、慎太郎さんと偶然会ったってことだったけど、一体どこに行くつもりだったの?」

「どこって……特にあてはなかったさ。
ちょっとしつこいかっぱに出会ったから、そいつから逃れるために適当に旅してただけだ。」

「そうだったんだ。ゆかりさん、モテるんだね。」

「好きでもない奴にモテたって仕方ないだろ!」

ゆかりさんは、よほどそのかっぱがいやだったのか、ひどく不機嫌な声を上げた。