「えーーっ…そうなの?」

「お得意さんなんだ。
悪く思うなよ。」




町に着いて、今度は慎太郎さんを迎えに行ってもらおうと思ったら、ヨウカイの籠屋はお得意さんからの呼び出しがかかったって言って、慎太郎さんのいる方角とは反対の方に走って行った。



(……あれ?)




「ねぇ、ゆかりさん…あれって何?」

白っぽい煙みたいなものが、空をふよふよと飛び去っていく。
煙にしては、一固まりになっているのがなんだか変だ。



「あれは魂じゃないか。」

「魂?誰か死んだの?」

「そうじゃないよ。
あれは、魂飛ばしの魂だ。」

「……魂飛ばし…?」



呆れ顔のゆかりさんが教えてくれた所によると、遠くにいる者に連絡を取りたい時は、魂飛ばしというヨウカイに頼むらしい。
籠屋に依頼して来たのも、魂飛ばしの伝令によってだろうということだった。
言ってみれば、この世界の電話やメールみたいなもんなんだろうね。



「じゃあ、魂飛ばしに頼んで、慎太郎さんに迎えに行けないことを伝えてもらおうよ。」

「残念ながら、頼むには金がかかる。
しかも、このあたりのどこに魂飛ばしがいるかわからないからな。」

「そっか…じゃあ、ここで待つしかないんだね。」

「そういう…は、は、はっくしょん!」

話しかけた途端、ゆかりさんは大きなくしゃみをした。



「ゆかりさん、風邪でも引いた?」

「……たいしたことはない。」

「無理しちゃだめだよ…何か羽織るものでも……
あ、そういえば……」

僕は、おじいさんから旅人セットとかいうものをもらったことを思い出した。
小さな袋だったからたいしたものは入ってないだろうけど……



「あ、それは、旅人セットデラックスじゃないか!」

「え…あぁ、そうだね。
おじいさんがなんかそんなことを言ってたような気がする。」

僕が袋を取り出すと、ゆかりさんが待ちきれないようにしてそれをひったくった。



「こりゃあ、すごい!
これがあったら、しばらくは金がなくてもなんとかなる。」

「ゆかりさん…どういうこと?」