(……え?)



高下駄をそのままずっと上に辿っていくと……



「う、うわっっ!」



俺は思わず飛び起きた。
だって、そこにはまるでピノキオみたいに鼻の高い天狗が二人いたんだから。



(こ、これって…本物……?)



なんだかすごい迫力だ。
身長は美戎よりもずっと高いし…あ、それは高下駄のせいもあるか。
ぎょろっとした目は目力が強すぎて、とても視線を合わせられない。



「さすがに速いね。」

「当たり前だ。
ヨウカイの中でも我らに勝る瞬足なし!」

「さぁ、早く乗れ!」



「じゃあ、先に行ってるね!」

「……あ、あぁ。」



美戎が籠に乗り込むと、天狗達は俺には目もくれず走り出した。



「う、うわっ!ぶはっ!」



立ち上る砂嵐……
砂嵐がおさまった頃には、かごの姿はどこにも見当たらず……



すごすぎる…マジで270/khを超えてるかもしれない……



俺は、放心したまま、籠の走り去った後をしばらく眺め……



(……あ!)



どうせなら、みみでか達も載せていってくれたら良かったのに…と、思ったが、あの調子なら町まですぐだ。
ここに戻って来るのもそれほど時間はかからないだろう。
じっと待ってるのもなんだから、ぼちぼち歩いていこう。



それにしても、あのじいさん…なんで、美戎にだけ籠パスをやったんだ?
俺にはくれなかったぞ。
人間の籠は料金が高い、ヨウカイの籠は危険なことがあるかもしれないって言っただけだ。
同性でもイケメンと俺みたいのとでは差別されるってことか…?



(そうだよな……どうせ、どうせ俺なんて……)



沈む心、重くなる足……



どこの世界でも、イケメンは得ってわけだな…



「ばかやろーーーー!」



突然、叫んだ俺に、背中の三人がぴーぴーと怯えて騒ぎ出した。