「……どうかしたのか、二人共……」

次の朝、かっぱのゆかりさんが俺達の異変に気付いた。
異変っていうのは大げさかもしれない。
要するに、昨夜、スマホの電池がなくなったことで俺と美戎はちょっとばかり仲違いをしてしまった…と、いうことだ。
しかも、怒ってるのはどちらかというと俺の方。
あいつはしばらくしたら寝てしまって、朝もなにもなかったみたいに「おはよう」って言って来たけど、俺は昨夜のことがまだ消化出来なくて……
だって、せっかくじいちゃんに連絡が取れると思ったのに、電池が切れるなんてあんまりじゃないか。
しかも、美戎のやつ…メールが苦手なら電話すれば良かったのに…って、言いやがったんだ。
だから、それはじいちゃんの携帯の番号を忘れてたんだって言ったら、だったら、家に電話すれば良かったのにって言われて…
確かにその通りだ。
じいちゃんの家の番号は覚えてる。
なんで、そのことに気づかなかったのか、俺はものすごく後悔した。



「別にどうもしないよ。
ね?慎太郎さん。」

「……あぁ。」



俺はぶっきらぼうにそう答える。



悪いのは、美戎じゃない。
俺は美戎に八つ当たりをしているだけだ。
心の底ではそんなこともわかってるのに、素直になれないだけ。
あ~あ、見た目も頭も性格も全部負けてるなんて、悲しすぎるじゃないか。



そう……俺は、見苦しいジェラシーをしているだけなんだ!



「それなら良いけど…
次の町まではけっこう離れてるから、今夜は野宿になりそうだな。
食料とか買い込んで行かなきゃな。」

「そっか、じゃあ、僕が買い物に行って来るよ。」



おぉ、それは助かる。
二人の食欲のせいで、お金はどんどん少なくなってきてたところだから。



「ありがとう、美戎。」

やっぱりこいつは良い奴だ。
俺もいつまでも八つ当たりなんてしてちゃダメだな。



「気にしないで。僕、買い物好きだから。」

(……ん?)



言葉を言い終わると同時に、前に差し出された美戎の片手。



「え…っと……」

「僕、天国に行ったからお金全然ないんだ。」

「え、えぇーーーーっ!?」



天国って一体何なんだ?
って、金がないなら紛らわしいこと言うなよな!
俺は、なおさら美戎にイライラしてしまうのだった。