(嘘だろ……)



細っこい身体をしているくせに、美戎の食欲はすごいものだった。
最近は、ゆかりさんの食欲に慣れて来ていたとはいえ、美戎はゆかりさんよりもさらに食べる。
ヨウカイの子供も三人から四人になったこともあるし、その晩の食費がいくらかかるのか、俺は冷や汗が流れる想いだった。



「慎太郎…この人はあんたの友達だって言ってたよな?
どういう友達なんだ?」

「え…どういうって…それは……」

そんな設定はまだなにも考えてない。
どう答えようかと戸惑っていると、美戎が横から口を挟んだ。



「幼馴染だよ。
小さい頃、近くに住んでたんだ。
最近は、しばらく会ってなかったんだけど…
実は、慎太郎さん…ちょっとしたことから家出したんだ。
それで、おじいちゃんが慎太郎さんを探して連れ戻して来てくれって、僕の所に頼みに来て……」

「なるほど、そういうことだったのか。
でも、家出って…一体、何が原因なんだ?
あんたも子供じゃないんだし、話し合いでなんとか出来なかったのか?」

「え……?
あ、あぁ…そうなんだけど、俺もあの時は頭に血が上ってて……」



そう言うしかないよなぁ…話の成り行き上。
それにしても、美戎の奴…ぼーーーっとしてるみたいなのに、咄嗟に良くそんな嘘が吐けるもんだ。



「それでね、すぐにでも連れて帰りたい所だけど、慎太郎さんは家出中にお世話になった人に用事を頼まれて、それをやってからじゃないと戻れないんだ。」

「あ、それじゃあ、この前見せた村っていうのは、頼まれた用事のためなのか?」

「え…?あ、あぁ、そうなんです。」

「いくら世話になったか知らないけど、他人の頼まれごとのためにそんな危険な所に行くなんて信じられないな。」

「慎太郎さんは、律儀な人だからね。」

「へぇ…」



本当にうまいことを言う。
どんなことを言われても、すらすら答えられるなんてうらやましい。
俺は口下手だからなぁ……



「じゃ、あんたはこれから先も慎太郎と一緒に旅をするのか?」

「そういうことになるね。」

「ふ~ん……」







(はぁ……)



一気に軽くなった袋に、思わずため息が漏れた。
まぁ、あれだけ食べたんだ…それも当然だ。
こんな調子じゃ、金はあと何日分ももたない。
それから先はどうなるんだろう…?



「慎太郎…」

暗い気持ちで歩いていると、ゆかりさんが傍に寄って来て、小さな声で囁いた。




「なんですか?」

「とりあえず、あたいもしばらく一緒に行くよ。」

「えっ!?行くって…?」

「だから、一緒に旅するって言ってるんだよ。」

「ほ、本当ですか!?あ、ありがとうございます!」



あんなに渋ってたゆかりさんが、どうして気が変わったのかはわからないけど、とにかくこれで一安心だ。
お金がなくなってきたのは心配だけど、こんな良いこともあったんだ。
元気出さなきゃな。