「お兄ちゃん、ちょっとすんまへん。」

「あ、おばあちゃん…なんかお困り事ですか?」



あては、たまたま近くにおった若い男はんに声をかけたんどすが、振り返ると、それはなかなかのイケメンはんどした。
あては、高鳴る胸を抑えつつ、用件を話したんどす。



「お兄ちゃん、携帯電話かスマホンたらいうやつは持っといやすか?」

「うん、スマホ持ってるよ。」

「そら、よかった。
ほんだら、なんや呟くサイト?…ってご存知やろか?」

「うん、もちろん知ってるよ。」

「そしたら、そこでこれを探してほしいんやけど。」



あては、美戎から渡されたメモをお兄ちゃんに差し出しました。
なんやようわからんかったけど、美戎は、あっちの様子をつぶやきのサイトに書くさかい、それをネットカヘに行ってパソコンで見るようにて言うたんどす。
でも、そんな得体のしれんとこに行くのもいややし、パソコンなんてあてに使えるはずもおへん。
携帯電話やスマホンでも見れるてゆうてたけど、近所に携帯電話を持ってる人はおっても、誰もそんなもんわからへんて言わはって…
やっぱり、こないなもんは年寄りには無理や。
それで、仕方なしに見知らぬお人に声をかけたというわけどす。



「ちょっと待ってね。」

イケメンはんは、人差し指でスマホンをなでるみたいにして、なんややったはった。
男前な上に、こないに親切とは…ほんま素敵やわぁ…



「あったよ。
美戎さん…で、合ってる?」

「へぇ、間違いおまへん。」

イケメンのお兄ちゃんは、あてにスマホの画面を見してくらはった。



「お兄ちゃん……『なう』て、なんどすか?」

「あぁ、それは、今こんなことをしてる…みたいな意味やねん。」

「ここでは、みんな『なう』をつけなあきまへんのんか?」

「別に決まってるわけやないんやけどね。」

「へぇ…」



どうやら美戎は無事にあっちに着いたようや。
しかも、けっこう楽しそう…ていうことは、心配することもなさそうどす。



「おおきに、お兄ちゃん。
助かりましたわ。」

「いいえ、こんなことやったらいつでもどうぞ。
あ、俺…こういうもんです。」

お兄ちゃんは薄紫色のしゃれた名刺をくらはった。



「ルーチェ…の慎二はん?
ルーチェて、なんかのお店どすか?」

「うん、ホストクラブやねん。」

「ホストクラブ…!?
道理で……
あ、そういえば、ホストクラブの日当てどのくらいもらえますん?
実は、この美戎が前からホストクラブで働きたいて言うてたもんどすから……」



ほんま、ええお人と知り合いました。
あの子がこっちに戻ってきたら、このお兄ちゃんに頼んで美戎を働かせてもらいまひょ。
あの子は綺麗やし、外にももうだいぶ慣れたやろし、きっと働いても大丈夫や。



「ほな、また……」

あては、慎二はんの名刺を懐に入れて、とてもええ気分で家に戻りました。