「ごちそうさま。
すっごくおいしかったよ。
身体も暖まったし、本当に助かったよ。」

「いもいも…」

女の人は照れくさそうにして、小さく首を振った。



僕は、丘の家のお屋敷で話したのと同じく、おじいちゃんと行った東京での思い出を話して聞かせた。
女の人は静かに頷きながら、僕の話をとても楽しそうに聞いてくれた。
その間も、その人は焼き芋を焼き続けていて、僕とでか目に次々に食べさせてくれた。
見た目は僕の知ってる焼き芋そのものだったけど、芋自体が違うのか、それとも焼き方がうまいのか、今までに食べたことのないような格別のおいしさだった。




「じゃあ、そろそろ行くね。
こっちに行ったら……」

「いもっ!」



女の人は、立ち上がると大きく息を吸い込んで、一気にその息を吐きだした。
それと同時に、焚き火の周りにたちこめていた白い煙が晴れ、街道らしき道がぼんやりと見えてきた。
小柄な割には、ものすごい肺活量だ。




「もしかして、あの道をまっすぐ行けば隣町かな?」

女の人は、ゆっくりと頷いた。




「じゃあ……」

「いも!」

女の人は僕に押し付けるようにして、温かい包みを持たせてくれた。
そのにおいからして、どうやら焼き芋のようだ。
あんなにたくさん食べたのに、お土産までくれるとは本当に良い人だ。




「ありがとう!じゃあ、またね!」

「さむ~いも~」

女の人は手を振って僕達を見送ってくれた。









「本当に良い人だったね。」

「うが。」

「でも……どうして、あの人、『いも』としか言わないんだろうね?
あ、あと、『さむ』も言ってたっけ…
もしかしたら、よその国から来た人なのかなぁ?
……あ!」



『焼き芋たくさん食べ過ぎて、お腹ぱんぱんなう。』



つぶやいた後で気がついた。
あぁ、あの丘の上のお屋敷での食事も画像を撮っておけば良かったって。
かなり豪華な食事だったのに…
そういえば、さっきの人も……



「……あれっ?」



振り向くとそこはただただ真っ直ぐな街道が延々と続いているだけで……



あの女の人と分かれてから、僕は一度も曲がったことはないはずだけど、そしたらなんであの焚き火がないんだろう…?



(……ま、いっか。)



まだそんなに歩いたつもりはないけれど、意外とぼくらは歩いてて、焚き火からはうんと離れてしまっただけかもしれない。

その証拠に、ぼくらの行く先には町の輪郭がぼんやりと見えてきた。



「あと少し歩いたら休めるから、頑張ろうな。」

「うがー!」