おばあさんが連れて言ってくれたお店は、本当に天国だった。
華美な装飾がされた部屋の中には綺麗な女の子がたくさんいて、皆でおいしいご馳走をお腹いっぱ食べて、そしておいしいお酒をたらふく飲んで……
みんな、ものすごく優しくしてくれるし、そりゃあもう楽しくて……



だけど、そんな天国は次の日には地獄に変わった。



(な…な…なに、これ…?)



いつものように、お腹がすいて目を覚ますと、僕のまわりにはたくさんの女の子達が寝ていた。
ただ…その女の子はみんな裸で…しかも、僕も裸で……



(ま、ま、まさか……)



僕が慌てて服を着ていると、一人の女の子が目を覚まして、僕の傍にすり寄って来た。



「お兄さん…見掛けに寄らず強いのね……」

「う……」



いたたまれなくなった僕は、その手を振り払い、服を着て部屋を出た。



「あら、お兄さん…もうお発ちですか?
昨夜は、あんなにお楽しみだったのに、お早いですなぁ…」

店の出入り口にいたのは、昨日のおばあさんだった。



「う、うん…まぁね。」

「では…お代を……」







『激しく落ちこみなう。』



皮袋にあんなにいっぱい入ってたお金がすかすかになってしまった。
でも、僕が落ちこんでるのはそんなことじゃない。
僕が落ちこんでるのは、早百合さんを裏切ってしまったってこと…
あぁ、僕は早百合さん一筋のはずだったのに……記憶は全くないとはいえ、本当にえらいことをしてしまった。



(あぁ…僕、もう早百合さんに合わせる顔がないよ……)



どんなに落ちこんでいてもお腹は減る。
でか目もお腹が減ってるだろうと思って、僕はでか目を連れて食堂に入った。
そこで、朝食を採ったら、お金はますますすかすかになった。



『お金がなくなったなう。』



ネガティブな呟きをしながら、僕は、籠が集まる場所へ向かった。
お金はなくても籠なら籠パスがあるから乗れる。
早く、慎太郎さんをみつけて、お金のことは慎太郎さんになんとかしてもらおうって考えたんだ。



ところが、籠はひとつもそこにはいなかった。
近くにいたおじさんに聞いた所、籠は全部早くに出払ってしまったってことだった。