「え…本当に?」

「あぁ、間違いない。
この男なら、うちで働いてたよ。
そうだね…二週間程だったかね。」

「そう…それで慎太郎さんはいつ旅立ったの?」

「もう何日も前のことだよ。」

「そうなんだ…ありがとう。
助かったよ。」



ヨウカイの籠はものすごいスピードだった。
もしかしたら、新幹線よりも早いんじゃないかって思った。
しかも、揺れも少ないんだ。
だから、あっという間に隣町に着いて、そこでは慎太郎さんの話は聞けなかったけど、もう日も暮れて来たからその晩はそこに泊まった。
それから、次の日の朝に出発して、夕暮れにはずいぶんと大きな町に着いた。
地図で見るとけっこう離れた場所だから、ヨウカイのスピードはマジで新幹線並みなんじゃないかって思う。
その町で、慎太郎さんのことを聞きこんでると、慎太郎さんが農場でしばらく働いてたことがわかったんだ。
慎太郎さんは何日か前にここを旅立ったってことだったけど、このヨウカイの籠に乗って行けば、すぐに追い付ける…そう思ったけど、残念ながらヨウカイの籠は予約が入っていて、戻らなきゃならないってことだった。



(仕方ないな。
別の籠を探そう…)



町をぶらぶらしながら僕は籠を探した。
なんだか一昔前の町みたいな雰囲気だ。
服装も建物の様子も、僕のいた世界に似てはいるけど、微妙に違う。
なによりも町の中にヨウカイが普通にいるのがまず違う。
なのに、ヨウカイにも慣れてるはずのこの町の人々が、僕をじろじろ見ているような気がするのは気のせいだろうか?



「ちょいと、そこの美しいお兄さん!」

「……もしかして、僕のこと?」

声をかけて来たのは、ものすごくちっちゃいおばあさんだった。



「当然じゃありませんか。
お兄さん…この世の天国に行ってみたいと思いませんかえ?」

「天国…?」



それって、もしかしたらこっちの世界のキャバクラのこと?
……それは面白そうだ…!
呟きのネタにもなる!



「うん、わかった。
天国に行ってみる。」

「それは賢明なお考えです。
では、早速参りましょう…!」