「今でも、ヨウカイのたまごの斡旋料みたいなのはあるらしいけど、今時はよほどのヨウカイ好きじゃないともらってくれないだろうし、なかなかさばけないだろうなぁ…」

「な、な、な………」

ち、畜生!
あの老人が俺にヨウカイを押しつけたのには、やっぱりそんなからくりがあったんだな。
そうか…斡旋料がいくらなのかはわからないけど、それをもらえるから、俺にもちょっとだけ路銀や食料を持たせてくれたんだ…
感謝なんてするんじゃなかった!



「……どうかしたのか?」

「え…?あぁ、いや、別に……
あ、ところで、この場所わかりますか?」

俺は、あの老人の兄弟子が住むという村への地図をかっぱに見せた。



「ずいぶんとへんぴな所みたいだな。
街道からはずれてるから…ちょっと厄介だぞ。」

「厄介って?」

「つまり…さっき言ったやさぐれヨウカイや有害種が多く出没するってことだ。」

「えっ…!?」

かっぱの話によると、やさぐれヨウカイ達は、愛情を知らずに育ったり、中には虐待を受けて育った者もいるため、人間への憎しみが強いらしく、旅人をおいはぎしたり、酷い時には殺してしまうこともあるのだとか。
それと、有害種というのは、元々人間を食う習性のあるヨウカイのことらしく、先日出会ったさむいものように、見た目は人間と同じように見える者や罠を仕掛けて人間をおびきだす者が多くいるらしい。



(ど、どうしよう…!?)



あいつらはまだ小さくて、用心棒にはなれるはずもない。
かといって、他に用心棒になってくれるヨウカイなんて……ん?



俺の目の前にはとがった口元をしたかっぱがいて……



(そうだ…!)



「か、かっぱさん!お願いです!
俺達の用心棒として、この村まで着いて来てもらえませんか?」

「え…か、勘弁してくれよ。
やさぐれや有害種と戦うのは命懸けなんだぞ。
そりゃあ、あたいは人間よりは力はあるし、ちょっとした術なら使えるけど、でも……」

「お、お願いです!
俺…かっぱさんの他には頼れる人がいなくて……」

「……ゆ…かり。」

「え…?」

「だから…あたいの名前はゆかりって言うんだよ!」

「そ、そうなんですか…じゃあ、ゆかりさん、あらためてどうぞお願いします!」

俺は必死になって頼んだけれど、かっぱはなかなか良い顔はしなかった。