「あ、あの……」

まだ事情がよくわからない俺は、それを訊ねようとカッパに声をかけた。
すると……



「この、うすらバカ!」

酷い罵声と共に、乾いた音がして……
俺はものすごい力で頬を打たれて、吹っ飛ばされた。
その迫力に三人も固まったまま、じっとかっぱをみつめてた。



「おまえ、もうちょっとで食われるところだったんだぞ!
わかってんのか!」

「え……く、食われるって……」

今の強烈なビンタのせいで、まだ頭がくらくらしていた。
だけど、黙ってたらますます怒られそうだったから、必死になって話したんだ。



「おまえ!さむいもを知らないとでも言うんじゃないだろうな!?」

「さ、さむいも…?」

「……まさか、本当にさむいもを知らないのか?」

俺は素直に頷いた。



かっぱは目と口を大きく開き…多分、驚いているんだろう。
そして、その顔が次第に困ったような顔に変わっていった。



「あの…さむいもって何なんですか?」

なんで、かっぱに敬語を使ってるのかわからなかったけど、でも、今の状況ではどう考えてもかっぱの方が優位だから仕方ない。



「……本当に知らないのか?」

「すみません。」

俺は、この世界の人間じゃないんだから知らないのも当然だろ。
自分でもなんで謝ってるのかわからなかったけど、でも、今はそう言うしかなかったんだ。
かっぱは人間がするように、小さな溜め息を一つ漏らした。



「おまえ、一体、どこの田舎から出て来たんだ?
さむいもを知らない奴なんて、聞いたことがないぞ。
いいか?
さむいもっていうのはおとなしそうなふりをしながら、とんでもなく強暴で冷酷な奴なんだ。
術を使って旅人を幻の世界に呼びこみ、そいつを捕まえて焼き芋にして食っちまうんだぞ。
今では珍しい妖怪有害種の一種だ。」

「な、なんですって?
そ、それじゃあ、さっき焚き火の側にいたあの女性が妖怪だって言うんですか?」

「そうだ。
あのまま、あたいがみつけなかったら、おまえもそしてそこのチビ共も、焼きいもにされて食われてたぜ。」



マ、マジ…?
っていうか、なんでそのまま食わずに、わざわざ焼き芋にするんだ!?
って、気にするべきはそんなことじゃない。



(俺…危ない所だったんだ……)



事情を説明されて、改めて俺は背筋が寒くなるのを感じた。