「さぁ、今日も頑張って行こうな。」

まだこっちの世界のお金のことはよくわからないけど、もしかしたら思ったよりも高額のお金が当たったのかもしれない。
毎日、宿に泊まり、外で食事をしても、持っているお金はなかなか減らない。
この分なら考えてたよりも早く目的地に行けるかもしれないとの推測に胸が躍る。
だけど、そううまくはいかなかった。
ある日のこと、俺は、とある場所で立ち止まった。
地図には載っていない二股の道にさしかかったからだ。



「おかしいなぁ…
こんな所に二股の道なんて描いてないぞ。」

標識も出ていない。
誰かに道を訊ねようにも、あいにく誰も歩いていない。



「……仕方ないな。
とりあえず、こっちに進んでみるか。」

俺は単なるカンで片方の道を選び、そっちに向かって歩き始めた。



寂しい道ではあったが、特にこれと言って変わった所はない。
だけど…どうも薄気味が悪い。
引き返した方が良いのか、それともただの気のせいなのか……
決心がつかないままにその道を歩き続けていると、不自然な程唐突にあたりが冷え、寒くなってきた。
空もいつの間にか鉛色の雲に覆われている。
今にも冷たい雨が…いや、雪が降ってもおかしくない。



「うがうがうが。」



背中に背負ったかごの中で、三人が騒ぎ始めた。
寒いのか怖いのか、どういう気持ちなのかはわからないが、奴らが不安がってることは間違いない。



(どうしよう…やっぱり引き返すべきか?
でも……ん?)



少し先に赤くちらちら動くものに俺は気付いた。
火だ。
どうやら、誰かが焚き火をしているようだ。
良かった…あの人に道を訊こう…!
俺は急いで焚き火の元へ駆け出した。