(……ん?)



「そういえば…おまえは死ぬことはあるのか?
たとえば……大怪我だったり、病気だったりしたらどうなるんじゃ?」

「そんなのないない。
だって、僕は式神だもん。
病気になんてならないし、怪我もしないよ。
……まぁ、よほど強い式神に襲われたり、陰陽師にでも封じられたらおしまいかもしれないけど、そういうことってそうそうないと思うよ。」

「なんと……!」



今更にして、わしはこの上ないほど、頼れる味方をみつけたことを実感した。
少なくとも、美戎について心配することはなさそうじゃ。
異世界がどんな所かはわからんが、この美戎ならどうにかして生き延びることが出来るじゃろう。
問題は慎太郎の方じゃ。
それと、美戎が無事に慎太郎をみつけてくれることと……



(……そうじゃ!)



「大変じゃ!
大切なことを忘れておった。」

「おじいちゃん、どうしたの?」

わしは返事もそこそこに、寝室へひき返した。



(あったぞ。)







「ふ~ん、これが慎太郎さんか…
おじいちゃんに似てるね。」

「やっぱり、そう思うか?」

うかつなことに、わしは、美戎にまだ慎太郎の写真を見せていなかった。
本当に危ないところじゃった。
慎太郎の顔もわからず、探せというのは無理な話じゃ。
わしは、昨年の夏、祭りに行った先で撮った慎太郎との2ショットを美戎に手渡した。



「うん、よく似てるよ。
いかにも、おじいちゃんと孫って感じで良いよね。
……うちのおばあちゃんと早百合さんはあんまり似てないんだよ。」

美戎は慎太郎とわしの写真を見ながら、寂しそうにそう呟いた。



「そうなのか?
そういえば、早百合さんという人はよほど遠くに働きに行ってるのか?
滅多に戻って来ないという話じゃったが……」

「そうだよ。
早百合さんは、まぐろを追いかけて遠い外国の海まで行ってるんだ。
大変な仕事だけど、給料は良いんだって。」

「な、なんじゃと…?」



いくらなんでも女性がまぐろ漁船に乗ってるなんてことはなかろう。
もしかしたら、家族には言いにくい仕事なのかもしれん……
詳しいことはわからんが、早百合さんという人も苦労しとるんじゃな……