「さ、降りた、降りた。
ここが、わしの家じゃ。」

「へぇ…けっこう立派な家だね。」



東京に泊まった日は、美戎と二人で久し振りの夜遊びをした。
以前から噂には聞いていたキャバクラなる所に行って夜通し騒ぎ、夢のような体験をした。
東京とは、カワイ子ちゃんがなんと多い場所なのじゃろう…
その余韻からまだ覚めきれない次の日の朝早くから、今度は観光に出掛けた。
有名所をいくつか周り、それが済み、さてそろそろ帰ろうかと思うておると、美戎が異世界に持って行く服が欲しいと言い出しおった。
まぁ、確かに着替えもないのでは不自由するじゃろう。
断るわけにもいかんので二人で一緒に買い物をしていると、美戎にモデルだのタレントだののスカウトが次から次に現れて、それらを振り払うのが大変じゃった。
そんな中、どうにかこうにか買い物を済ませ、ようやく帰りの新幹線に乗りこんで……
慌しくも楽しい時間ではあったが、我が家に辿り着いた時には、やっぱり心の底からほっとした。



「早くに行ってほしいのは山々じゃが、今日はもう遅い。
出発は明日の朝ということにしよう。
出来れば、今夜のうちにあっちに持っていくものを準備しといておくれ。」

「うん、わかったよ、おじいちゃん。」

「では、おやすみ。」



そう言って部屋に戻ったものの、わしはなかなか寝つけんじゃった。
それはもちろん久し振りに都会へ旅行したせいではなく、美戎が本当に慎太郎を連れて戻ってくれるかということと、慎太郎ばかりではなく、美戎も何事もなく戻ってこれるかということが気にかかっておったからじゃ。

相当に疲れてもおるはずじゃが、神経が高ぶってどうにも眠れん。
繰り返す寝返りにうんざりして、わしはまたむっくりと起きあがった。