「……った…」

お尻に走った衝撃に、俺は思わず声を上げた。



それよりも衝撃的だったのは、あたりの景色がすっかり変わっていたことだ。
俺はさっき蔵の二階にいたのに、この場所はまるでちがって……
何枚もの畳の敷かれた広い座敷のような場所にいた。
座敷とはいっても旅館って雰囲気はない。
どっちかっていうと、お寺……?



いや、そんなこと言ってる場合じゃない。
今は、ここがどこかってことよりも、なんでこんな所にいるかってことが重要なんだ。
俺は、じいちゃんの家の蔵に入って二階への階段を発見し、そしてそこで家宝と思しき壷をみつけた。
そして、その壷に……



……吸いこまれた……?



ば、ばかな……なんで壷が人を吸いこむんだ?
しかも、吸いこまれた瞬間、違う場所にいるなんて、映画やドラマじゃ良くあるけどまさかここが異世界だなんてこと……




「誰じゃ!?」

「えっ!?」



振り返った場所には、なにやら宗教っぽい格好…とでもいうのか、一般人とは少し違うローブのようなものを着た老人が立っていた。



「あ、あの……ここってどこですか?」

「はぁ?何を寝惚けたことを言うておる。
おぬし、こそどろか?」

「ま、まさか!
俺は、その……」



こんな場合、なんというべきだろう?
蔵の中にあった壷に吸いこまれたなんて言ったらおかしいと思われるに違いない。
では、何と言う?
道に迷ったなんて言っても、俺はすでに建物の中に入ってるんだから怪しまれても当然だし、言い返す言葉さえない。




「早く答えんかーーーー!」

「は、はいっ!実は……」



老人のバカでかい声に驚いた俺は、反射的に真実を口にしていた。




「なんじゃとぉ~!
壷の中に吸い込まれて、気が付いたらここに来ていたというのか!?」

「は、はいっ!
信じられないと思いますが……いや、当の俺も信じられないんですが……もしかしたら、勘違いかもしれないんですが、俺……」

「では、おぬしは勘太郎の息子なのか?」

「勘太郎は俺のじいちゃんです!
なんで、じいちゃんの名を…!?」

「なるほど……」

そう言いながら、老人は俺の顔をまじまじと眺めすかした。