「うわぁ…リアル新幹線だ…!」

美戎は、子供のように顔を上気させ、ぱしゃぱしゃと新幹線を撮影する。



次の日、わしと美戎は早速うちに向かって旅立った。
早めに出て、駅ビルで美戎に服を買い、その上スマホが欲しいというのでそれも買い与え…
あぁ、今回の旅はものすごい散財じゃ……
いや、慎太郎のためなんじゃからそんなことは言ってはおれんが、それにしても異世界に行くのになぜスマホが必要なんじゃ……



「うわぁ、テレビで見たのと一緒だ!」

新幹線の中に入ってからも、美戎はきょろきょろと車内を見まわしてはしゃいでおった。



「おじいちゃん、撮ってよ。
ここを押すだけだから。」

「え……あい、わかった。」

ピースサインをしながらにっこりと微笑む美戎はとても美しい。
わしが買ってやったスーツもとても似合っておる。
人間でも妖怪…あ、いや、式神か…とにかく、男前はなんでも絵になるもんじゃ。
それに、美戎はどこからどう見ても人間に見える。
いまだにわしもこの者が本当に人間以外のものなのかと信じられない気分になってしまうが、空気の中から急に現れる瞬間は確かに見たし……



「あ、出発だ!
おじいちゃん、お弁当食べようよ!」

「お弁当って、まだ少しはや……」

わしが答えているうちに、美戎はさっき売店で買った弁当を開いていた。



「あぁ、おいしい!
こんなおいしいもの、ひさしぶりだよ!」

大食いだからと三つも買っておったが、本当に瞬く間にお弁当が消えて行く。



「のう…美戎……
式神というものは、人間と同じように食事を必要とするものなのか?」

「多分、そうじゃないと思うよ。
僕は式神の友達がいないから、正しくはわからないけど。」

「では、なぜおまえさんはそんなに食べるんじゃ?」

「……さぁ?
多分…だけど……
あの家の人達はとにかく大食いなんだよ。
おばあちゃんも早百合さんも呑兵衛さんも、みんな底無しの胃袋なんだ。
だから、早百合さんが僕を作る時にも食べることをずっと考えてたんじゃないかと思うんだ。」

「……なるほど。」

あのばあさんが言うとった。
陰陽師というものは、思念によって式神を作ることが出来るのじゃと。
しかも、早百合さんという人は、陰陽道を学んだこともないなんちゃって陰陽師じゃということじゃから、そういう邪念が入りこんでしもうたのかもしれん。