「いやぁ、ふわふわでお口の中で溶けはるわぁ。
なんや、寿命が延びそうなお味どすなぁ。」



(はい、はい。)



わしが馬鹿じゃった。
ばあさんは、宿を出ると片手を挙げてタクシーを停め……要するに、タクシーによる観光が始まったのじゃ。
着いた先ではわしよりもばあさんの方がはしゃぎ、携帯で写真を撮りまくっておった。
そして、なにかというと食べるんじゃ。
朝は、ほとんど具のない味噌汁と海苔3枚という粗末な朝食を出してくれたが、それは別料金といって500円取られた。
そして、行く先々でみたらし団子だの抹茶パフェだのを食べまくり、小腹がすいたとハンバーガーショップにも入ったというのに、昼には特上のうな重を食べておる。
見た目には干からびたばあさんのくせに、食欲は部活をやってる高校生並じゃ。



「あら?食べはらへんのどすか?」

「いや、食べます。食べますとも!」



さすがに腹はぱんぱんじゃが、食べないと言ったらくれというに違いない。
やってたまるか!
無理矢理にでも食べてやる!
あぁ、食べてやるとも!







(……はぁ……ものすごい散財じゃ……)



夕方になり、ようやくわしらは宿に戻った。
タクシー代と食事代で、羽根が生えたように一万円札が飛んでいった……



(わしは、一体、何をしとるんじゃ……)



後半はもうどこに行ったのかも記憶しておらん。
ただ、ばあさんに連れられるままに、どこかに行って写真を撮っただけのこと…
あぁ、こんなばあさんに一縷の望みを託してしまうとは、なんと…なんと愚かな……

自分の馬鹿さ加減に、わしは100%脱力した。



(明日は家に帰ろう……
ここに来たのは間違いじゃった……)