(困ったのう……ここで何の手立てもみつからんかったら、わしゃ、一体どうすりゃええんじゃ……?)



「明日は、このあたりを観光しまへんか?
良かったら、あてが案内したげますえ。」

「え…?
あぁ、せっかくですが、わしは観光する気分ではないんで……」

「そうでっか……
あ~あ…ひさしぶりに観光でもしたら、なにか煎兵衛はんの重要な話でも思い出せそうやったのに……」



(このばあさん……本当はなにか知っておるのか?
それとも、何も知らずにおって、たかるだけたかるつもりなのか?
観光に連れて行くと言っても、どうせ、ガイド料が目当てなんじゃろ。)



ばあさんは、ビールや酒や焼酎を、まるで水のようにぐびぐびと空けていく。
あんなにちゃんぽんしても、ほとんど酔ってもなさそうじゃ。
なんといううわばみ。



(それはそうと……)



慎太郎を救い出す事が出来そうな策は、今のわしには何もない。
ならば、やはり、このいいかげんに見えるばあさんに賭けてみるべきなんじゃなかろうか?
そうじゃ…万にひとつでも可能性に賭けるのじゃ!



「や、やっぱり明日は観光に行きましょう。
せっかくこんな遠くまで来たんじゃから、何も見ずに帰るのはもったいない。」

「その通りどす、
こんなええとこに来て、すぐ帰るやなんてそないな無粋なことおへんえ。
あ、もちろん、ガイド料なんていらしまへんから。」

「えっ!?そうなんですか?」

「当たり前どす。あんさんはうちのお客さんやし、古うから縁がおますんやさかい。
ただ…交通費やらお食事代くらいは出来ましたら……」

ばあさんは、またしなを作って、畳にのの字を書きまくる。



「あぁ、そのくらいのことならもちろん。
では、どうそよろしくお願いします。」



結局、ばあさんはその後もずっとわしの部屋に居続け、機嫌良く歌ったり踊ったりしておった。
いつの間にかわしが眠ってしまってからも、ばあさんはずっと飲み続けておったらしく…わしが目を覚ました時には、コンビニで買って来た大量の酒は、皆、空になっておった。