ヨウカイ・イセカイ・キキカイカイ

「ど、どうしたんです!?」

「ええこと、思いついたんどす!」

「どんなことですか?」

「早百合の戸籍をつこたらええんどすがな。
美戎も戸籍はないんやし…って、式に戸籍があったら却っておかしなことどすもんな。
せやから、早百合は一生結婚することはおへんのやさかい、早百合の籍を借りたらええんどす。」

「で、でも、早百合さんとゆかりさんでは年が…
そう言えば、早百合さんはいくつなんですか?」

「ええっと、確か、今年で45…いや、46やったかいなぁ…」

「よ、45…って……ゆかりさんとは親子程も違うじゃないですか!!
それはいくらなんでも無理ですよ!」

「そんなこと、気にすることおへん。
年の取り方なんか、人それぞれどすがな。
今は、美魔女とかゆうて、年よりごっつう若う見える人が流行ってますし、ゆかりちゃんも美魔女やいうことにしたらよろし。」

小餅さんは平然とそんなことを言う。



「で、でも…他人の戸籍を借りるなんて、そんなこと犯罪だし…」

「他人やおへんえ。
親戚どすがな。
それに、もしもばれたらあっちの世界に逃げはったらよろしいがな。」

「えぇぇ……」

あまりにもむちゃくちゃな提案だ。
さすがにそんなことは無理だと言おうとした時……



「そうですな。
それは名案かもしれません。」

「じ、じいちゃん…!?」

な、なにを言い出すんだ!
じいちゃん、正気か!?



「慎太郎…とりあえずはそうさせてもらっておいたらどうじゃ?
なんなら、子供が出来た後、戸籍上だけ離婚したら良いんじゃないか?
そうしておけば、子供の籍で困ることはなかろう?」

「そ、それはそうだけどさぁ…」

「ほら、勘太郎はんもこうゆうてはります。
月になんぼかずつ、戸籍のレンタル料言うんか、お気持ちをいただいたら早百合も文句は言わへんと思います。」

「えっっ!!」

俺とじいちゃんは思わず顔を見合わせた。



「……大丈夫じゃ。わしも協力するからな。」

じいちゃんが俺に小声で囁いた。



「じゃ、じゃあ、早百合さんがもしもそれで良いっておっしゃるなら……」

「早百合のことなら心配はおへん。
反対することはないと思います。」

「とりあえず、一応聞いてみて下さい。」

小餅さんはあんなことを言ってるけど、早百合はきっと断ると思う。
戸籍上のこととはいえ、そんな法律を犯すようなこと…ほいほいと了承するはずがない。