ヨウカイ・イセカイ・キキカイカイ

「とにかく…すぐに答えが出せるようなことでもない。
そのことはおいおい考えていくしかなかろうな。」

「……そうだね。」

「しかし、山ノ内家の者が安倍川の者と結ばれるなんてのう…
縁とは不思議なもんじゃのう…」

じいちゃんは、しみじみとした声でそう言った。



「そういえば、父さん達は山ノ内と安倍川家の関わりについては何も知らないんだよね?
それはまだ話しちゃダメなの?」

「もちろんじゃ。
この秘密は、先代が死んだ時にしか伝えてはならんとされておる。
おまえだって本当なら憲太郎が死んだ時にしか、このことは知らされないはずじゃったんじゃぞ。」

「そっか……」

事情を全部話せたら、俺も悩まなくて済むのに…
でも、話したところで、なかなか急には信じてくれないだろうな。
異世界だとか、河童だとか、実はゆかりさんは200歳超えてるとか……
下手すりゃ、結婚を反対されてしまうかな?
そうだな。両親はじいちゃんみたいに頭がやわらかくないから、反対される可能性は強いかもしれない。
やっぱり言わない方が良さそうだ。



「それはそうと、じいちゃん…
ずいぶん、散財させてごめんな。
俺、すぐに仕事探して働くから……」

「そんなことは気にせんでええ。
……前のところはやっぱりだめじゃったのか?」

「うん、まぁね。
あまりにも無断欠勤が長すぎたから仕方ないよ。」

「そうか……」

広い浴室には、俺とじいちゃんしかいなかったから、俺達はゆっくりと話をし、貸し切り気分で温泉を満喫した。



「じいちゃん、背中流すよ。」

「そうか、すまないな。」

じいちゃんの小さくてしわしわの背中を流していると、なんだか俺の気持ちまで温かくなった。