ヨウカイ・イセカイ・キキカイカイ





「あれ?
じいちゃんとばあちゃんは?」

「うん、疲れたから、さっきの茶店で待ってるって…」

「そうか……」



俺達が向かったのは、山の麓のひなびた温泉宿だった。
その山の頂上からの景色は絶景だと教えられ、僕らはハイキング気分で山道を登り始めた。
ゆかりさんはやっぱり俺達の中で一番足が丈夫だから、さっさと先に登って行って、俺はじいちゃんや小餅さんと一緒に登った。
ゆかりさん程とはいかないまでも、二人とも、年齢の割には健脚だ。
山の中ほどには小さな茶店があって、そこでは香ばしい香りのお団子が売られていた。
当然、小餅さんは、「ここで一休みしていきまひょ。」と座り込み、俺がせかすと、ここで待ってるって言い出したんだ。
きっと、お団子がまだ食べたりなかったんだと思う。



「見てみろよ、慎太郎…
すっごく綺麗だな……」

「え…あ、あぁ……本当だ……」

目の前には赤や黄色に色付いた嘘みたいに鮮やかな景色が広がっていて……まさに、息を飲む程の絶景だ。



「……こっちの世界にもこんなに綺麗な場所があったんだな。」

「こっちの世界も捨てたもんじゃないだろ?」

「……まぁな。」

俺達はしばらくその景色に見とれていた。
あたりには誰もいない…
まるで、目の前の景色が俺達だけの景色みたいな良い気分になれた。



「慎太郎……結婚の話なんだけど……」

「え…?け、結婚…!?
あ、あれは小餅さんが勝手に言ったことで、あ、あんなことは気にしないで良いんだ。」

「……なんだ、やっぱりそうだったのか…」

ゆかりさんはそう言って、どこか寂しそうに顔を伏せた。



「ゆかりさん……」

「そうだよな…見た目は若くても、あたいは200年以上生きてる化け物だ。
そんな女を本気で好きになる者なんていないよな。」

「そ、そんなこと、俺は気にしてない!
俺は……俺は本当にゆかりさんのことが好きだ。
でも……ゆかりさんが好きなのは美戎だろ?」

「この間、言っただろう?
あたいは、早百合には敵わない。
だから、美戎の事は諦めた。」

「……そういうことか。」

正直言って、ちょっとショックだった。
ゆかりさんは美戎には脈がないから諦めるつもりになって、
多分、やけくそか、美戎を忘れるためにあんなことを言ったんだってわかったから。