「ほんまになんでもあるんどすなぁ…」

夜は、じいちゃんと小餅さんとゆかりさんと俺とで、近所のファミレスに出かけた。
小餅さんとゆかりさんは、相変わらずすごい食欲だ。
美戎と早百合さんは、ラブラブ状態だそうで…
なんだかとっても美戎が不憫な気はするけれど、本人がそれで良いって言うのなら、俺があれこれ言うこともない。



「そ、それで…小餅さん……
この度の謝礼の件なんですが……」

じいちゃんは、恐る恐る話を切り出した。
ここに来てから…いや、来るまでにもずいぶんお金を遣ったのに、これからまた大金がかかるのは本当に申し訳ないけど、俺も貯金って言える程の貯金は持ってないから、今はじいちゃんに頼るしかない。



「あぁ、美戎の貸し出し賃のことですな。
えーっと…1日1万円やさかい、533日分で533万円どす。」

「ご、533万円!!」

「あ、消費税はサービスしときます。」

婆さんはそう言ってにっこり笑った。



なんてことだ…
俺のせいで、じいちゃんにどえらい借金を背負わせてしまった…



「それに、危険手当と美戎がおらんようになったことでこっちの仕事に支障が出たことを考えて…そうどすなぁ…
キリのええところで1千万でよろしおます。」

「い、い、1千万!!」

じいちゃんの顔から血の気が引いて行った。
きっと、それは俺も同じだったと思う。



どうしよう!?
じいちゃん、そんな大金を持ってるのか!?
下手したら、家屋敷を手放すことになる…?
いや、そんなことはさせられない。
俺がなんとかしなきゃ…!
元はと言えば、俺のせいでこんなことになったんだから…
俺がどこかで借りて……でも、俺にそんな大金を貸してくれるとこなんてあるのか!?



「……お二人とも、なんちゅーお顔してはりまんのや。
冗談どすがな。じょーだん!」

小餅さんは、肩を揺らしてとてもおかしそうに笑った。



「あて…実は昔からでずにーらんどに行ってみたかったんどす。
それと、温泉。
そうどすなぁ…寒いとこがよろしいなぁ。
おいしいもん食べて、ゆっくり温泉に浸かって……
それさえ叶えてくれはったら、それでけっこうどす。」

「ほ、本当ですか!」

俺とじいちゃんは顔を見合わせて大きく頷いた。
1千万に比べたら、そのくらい安いもんだ。
そりゃあ、ばあさんは大食いだから、普通よりは高くつくかもしれないけど、1千万に比べたらずっとましだ。