「でも……美戎は美戎だもんな。」

「う、うん、そうだね。」

その気持ちは俺も同じだったけど…今の一言にどういう意味がこめられてるのか、俺にはよくわからなかった。
やっぱり、美戎が人間でも式神でも好きな気持ちは変わらないってことなんだろうか?



俺達はどちらも押し黙ったままで、歩き続けた。



「なぁ……」

「なに?」

「あたい…もう少しこの世界にいても良いかな?」

「え?もちろんだよ。
好きなだけいたら良いよ。
あ、それで…ゆかりさん……
俺、ちょっとゆかりさんにお願いがあるんだけど……」

言いにくい話ではあったけど、俺は、じいちゃんが俺のアリバイ工作のために吐いた嘘のことを話した。
まぁ、カワイコちゃんには振られたから帰って来たっていうことも出来るけど、それじゃああまりにも情けない。



「わかった。
一緒に旅をしてたのは本当だし、あんたにはいろいろと世話になったからな。
そのくらいお安い御用だ。」

「あ、ありがとう!」

世話になったのは俺の方なのに…
本当にゆかりさんっていい人だ。
こんな美人を連れて帰ったら、父さん達、びっくりするだろうなぁ…
とりあえず、ゆかりさんを紹介して…しばらくしたら振られたってことにすれば良い。
ゆかりさんだって、ずっとこっちにいるわけにはいかないんだから。

そう思うと、ものすごく寂しい気持ちになった。



あ…でも、ゆかりさんがいたら、いつでもあっちの世界に遊びに行けるんだ!
それに、もしかしたら美戎だって結界を破れるかもしれないし、そうなったらますます行き来はしやすいぞ!
子供達にもしょっちゅう会いに行けるんだ!



今頃そんなことに気付いた俺は、急に胸が弾むのを感じた。