「けっこう良い町だな。」

「うん、そうだね。」

じいちゃんと小餅さんは昨夜の疲れが出たらしく熟睡してて…
四人でお昼寝っていうのもなんだから、俺とゆかりさんは近くを散策に出かけた。



「ねぇ…ゆかりさん……
早百合さんに会ってみてどうだった?
早百合さんとゆかりさんは、住む世界は違うけど血が繋がってるんだよね。」

緩やかな流れの川のほとりを歩きながら、俺はゆかりさんに訊ねた。

「なんか、思ってたのと全然違った……」



やっぱりか……
あの美戎が好きになる相手だもの。
ゆかりさんも、きっと早百合のことはすごい美人だろうと思ってたんだろうな。
まぁたとえそうじゃないにしても、まさかあんな感じだとは考えるはずもないよな。



「あたい…実は……」

「どうしたの?」

「見てみたかったんだ……
早百合がどんな人なのか……」

「……そう。」

それはきっと美戎のことが好きだからだろうな。
ゆかりさんは、美戎の好きな女を見てみたかったんだろうと思う。



「あたい……完全に負けたって思ったよ。」

「え?」

「早百合はすごい奴だよ。
家族のために、あそこまで出来るなんて…
あたいにはとても出来ないな。」

ゆかりさんは、遠くを見る様な目をしてそう言った。
言われてみれば確かにすごいけど…
その前に、普通は見た目のすごさに気を取られてしまうもんだ。
そうじゃなくて、中身のことを認めるなんて、ゆかりさんってやっぱり良い人だなって、俺はあらためて惚れ直した。



「それはそうと、美戎が式神だってこと…
あんたはどう思った?」

「え?お、俺はただ驚いただけで…
だって、あいつ、そんなこと一言も言わなかったし…」

「そうだな。見た目はどっからどう見ても人間だもんな。
でも、あいつ、超人的な強さだったし…
考えてみれば、並みの人間にはあんなこと無理だよな。」

「あぁ……確かに……」

俺は、美戎が高くに飛び上って、飛び天狗達をバラバラにしたあの時のことを思い出した。



そうだよ…
あんなこと、人間に出来るはずないんだ。
もっと早くに気付くべきだった。