一階の奥の方からテレビの音が聞こえてた。
奴はきっとそこにいる。
俺は、その部屋を目指し歩いて行った。



「だれだ!きさま!」



俺がふすまを開けると、そこには中年のおっさんが座っていた。
思った通り、筋骨隆々とした坊主頭のおっさんだ。



「お、俺は……」



「さ、早百合さんっっ!!」



「……は?」



俺が答えようとした時、俺の横をすり抜けて、美戎はそいつの所に走り寄って抱き付いた。


な、なんだって?
今、美戎は、このおっさんのことを「早百合さん」と言ったように思ったのは俺の勘違いか!?



「いやぁ、早百合ちゃん。
帰っとったん?
早かったんやなぁ…」

「早かったじゃないぞ。
鍵もかけずにどこに行ってたんだ?
それにしても、美戎…その服はどうした?
まさか、美戎も外に出てたんじゃないだろうな。」

「そのことなんやけど…それにはいろいろ事情がおましてな。」



やっぱりだ。
ばあさんもこのおっさんを「早百合ちゃん」と呼んだ。
どういうことなんだ?
早百合って、どう考えても女の名前じゃないのか?
なんで、こんな奴が「早百合ちゃん」なんだ!?



「ばあさん、そいつは?」

早百合が、俺のことを顎でさし示した。



「あぁ、このお方は山ノ内慎太郎はんどす。」

「山ノ内…慎太郎?」

「早百合ちゃん……とりあえず、ここは狭いさかい、特別室で話しまひょか。」

立ち上った早百合は、俺よりも背が高かった。
こんなやつに本気でぶん殴られたら、俺なんてきっと一発でノックアウトだろう。
思ってたよりもずっと危険そうな奴だ。



(どうしよう……?)



何の対策も思い浮かばないうちに、俺達は特別室に移動した。