「楽しかったねぇ…!」

「またみんなで行きまひょな!」



結局、明け方までどんちゃん騒ぎは続いた。
小餅というばあさんは、お金の面でこそがめついが、その他の面では特に悪人という様子はなかった。
美戎も本当の祖母のように懐いてる感じだし、まぁ多少ぶっ飛んだところはあるとはいえ、想像していたようなあくどい人間には思えなかった。
もしかしたら、ばあさんは早百合に逆らえないだけなのかもしれない。
老人だし、早百合に追い出されたら行くところがないから、仕方なく、悪事に加担しているだけなのかも……



「ほな、そろそろ帰りまひょか。」

カラオケを出た俺達は、近くのファミレスで朝ごはんを食べて、そして、宿に戻った。



玄関の引き戸を開くなり、美戎はその場に立ち止まった。



「どうかしたのか、美戎…」

玄関には薄汚い男物のスニーカーがあった。
サイズは俺のものよりはるかにでかい。



(もしや…!?)



ついに黒い組織の奴の登場か!?
この靴の大きさから想像するに、かなりがたいの良い奴に違いない。
大丈夫か?俺……
そんな奴ともし戦うようなことになったら……



俺の身体がぶるっと震えた。
とにかく、ゆかりさんとじいちゃんを守らなきゃ…!
今のゆかりさんはかっぱの時みたいな力もない、ごく普通の女の子だ。
じいちゃんだって元気とはいえ、後期高齢者なんだ。
俺が守らなきゃ…!
い、いや、なにかあったらすぐに警察に連絡だ!
俺は、ポケットの携帯を確認した。



「ぼ、僕……」

美戎はえらく動揺している。
黒い組織の男に暴力でも受けていたのか?



「心配するな!」

俺は空元気を振り絞り、先頭に立って進んで行った。