「なんじゃ、そういうことじゃったか。
しかし、おまえはゆかりさんのことが好きなんじゃろう?
じゃったらいずれは……」

「それがそううまくはいきそうにないんだ。」

「なぜじゃ?」

「だって、ゆかりさんが好きなのは俺じゃなくて美戎なんだから。」

「あぁ……」

なんだよ、じいちゃん、その声は…
それだけで、「そりゃあ、そうだろう。おまえと美戎を比べたら、誰だって美戎の方を好きになるよな。」って納得したのがまるわかりな「あぁ……」だった。
まぁ、現実にそうなだけに、俺には何も言えないけど。



「じゃ、じゃが、美戎には早百合さんがおるじゃないか。
だったら、おまえにもまだ望みはあるぞ、きっと。」

「いいよ、無理しなくても。」

「無理なんかじゃないぞ。
蓼食う虫も好き好きというてな。
人それぞれ好みというものがあるからな。
誰もが綺麗なものや良いものを好きになるとは限らんのじゃよ。」

じいちゃん…それ、ちっともフォローに聞こえない。



「それはそうと、ゆかりさんもべっぴんさんじゃが、早百合さんもきっとすごいべっぴんさんなんじゃろうな。
なんせ、あの美戎があれだけめろめろになっとるんじゃからなぁ。」

「まぁ、そうだろうね。
絵に描いたような美男美女のカップルなんだろうね。」

その後、しばらく待ってもじいちゃんからの言葉はなく、すーすーという小さな寝息が聞こえるだけだった。



「じいちゃん…?」



(じいちゃん、寝たのか……なんだか唐突だな。)



ま、今日はいろんなことがあったし…
普段からきっとじいちゃんは早寝だろうし、無理して起きててくれたのかもしれないな。



(おやすみ、じいちゃん……)