「いやぁ、しかし、本当に良かった……」

その晩、俺はじいちゃんの部屋で眠ることにした。
部屋はいくつもあるけど、じいちゃんがそうしようと言ったから。
こんな風にじいちゃんと布団を並べて眠るのなんて、小さい時以来のことだからちょっと照れる。



「長い間、心配かけて本当にごめんな。」

「いや、わしが悪かったんじゃ。
蔵を開けっ放しで出て行ったから……」

「そうじゃないよ。
蔵には入っちゃいけないって言われてたのに、俺が勝手に入ったから。
まさか、あんな壺があるなんて考えもしなかったもんなぁ…
そういえば、こっちの壺にはなんで結界が張られてないんだろう?
こっちの壺にも結界が張られてたら、こんなことにはならなかったのに……」

「そうじゃな…
おそらくは、煎兵衛さんは向こうに行ったっきりだし、他の陰陽師にはあの壺のことを話したくないから…それで、そのままにしといたんじゃなかろうか。」

「うん、そうだね。きっとそうだよ。」

じいちゃんの推測はきっと当たってると思う。
そうじゃなきゃ、あんな危険な壺を放置しておくはずがない。
あの壺に、むやみに人を近付けないことも、きっと山ノ内家の当主の責任となったんだろうな。



「ところで、ゆかりさんのことなんじゃが……」

「なに?」

「あの子とは結婚の約束でもしたのか?」

「え、ええーーーっ!
そ、そんなこと…ないない!」

「でも、こっちの世界に着いて来た…いや、連れて来たというべきか……」

「そ、そうじゃないんだ!
ゆかりさんには、前から俺達の故郷を見てみたいって言われてて、それで、こっちに戻って来るまでは俺達が違う世界から来たなんてことはもちろん言わなかったんだけど、帰るにはゆかりさんが必要だし…
だから、本当に間際になってそのことを話して……
そしたら、ゆかりさんがぜひ俺達の世界を見てみたいって言い出して…まぁ、俺達の故郷を見せるっていうのは元々約束してたわけだし、その…それで……」

じいちゃんがおかしなことを言うから、俺は焦ってしまって、
しどろもどろに事情を説明した。