「美戎…おまえさんも食べ終わったら、小餅さんに電話をしといた方がええぞ。」

「うん、わかってる。」

「なんでも、早百合さんが近々帰って来るとか言うておったぞ。」

「えっ!早百合さんが……!」

そう言うと美戎は立ち上がり、電話をかけ始めた。



「あ!おばあちゃん!
僕だよ、美戎!
早百合さんはいつ帰って来るの?」

すごい食いつきようだ。
帰って来た報告よりも、早百合のことを訊ねてる。



「美戎…よっぽど早百合さんのことが好きなんだな。」

ゆかりさんが小さな声でぽつりと呟いた。
その顔はとても寂しそうなものだった。



(……やっぱり、ゆかりさんは美戎のことを……)

そんなことは前からわかってた。
だけど、ゆかりさんの寂しそうな顔を見ると、改めてそれを思い知らされる。


俺はゆかりさんが好きで、ゆかりさんは美戎が好きで、でも、その美戎は早百合のことが好きで……
うまくいかないもんだな。


「うんうんうん。
明日帰るから……じゃあね!」


(明日……?)


美戎は、また席に着いて、食事を再開した。



「美戎、明日帰るつもりなのか?」

「うん、早百合さんがそろそろ帰って来るみたいだから。」

「そんなに急がなくて良いじゃないか。
ゆかりさんもいることだし、こっちで観光でもして…」

「ううん、もしかしたら予定より早く帰って来るかもしれないし、僕、明日帰るよ。」

美戎の洗脳はとても根の深いもののようだ。



「じゃあ…俺も一緒に行くよ。」

「えっ?どうして?」

「どうしてって…俺のせいで迷惑かけたわけだし、挨拶くらいしとかないといけないだろう。」

「なら、わしも行こう!」

結局、次の日、俺達は美戎の家に行くことに決まった。