「すごくおいしいです!」

「このすき焼き、最高だよ!
僕が家で食べてたすき焼きとは全然違うよ!」



じいちゃんは町の肉屋に電話をかけて、すき焼きを作ってくれた。
確かにすごくうまい!
きっと、じいちゃん、一番良い肉を注文してくれたんだろうな。



食事をしながら、俺達は向こうでの話をかいつまんで話した。
じいちゃんの質問も尽きない。



「な、な、なんと!
ゆかりさんが河童に…?」

「そうなんです。
多分、慎太郎さんと出会わなければ、私は今でもかっぱのままだったと思いますし、こちらに来ることもなかったでしょう。」

「なぜじゃ?
慎太郎がゆかりさんの呪いを解いたとでもいうのか?」

「そうだよ。
慎太郎さんがゆかりさんにチューしたから、ゆかりさんの呪いが解けたんだよ。」

「チュ…チューとな!?」

こ、こらっ!美戎!
そんなはっきり言わなくて良いだろ!
俺は恥ずかしくて、じいちゃんの視線を逸らした。



「慎太郎…おぬしもやるのぉ…」

じいちゃんはそう言って俺の脇をひじで小突く。



「そ、そんなんじゃないよ!」

「でも、ちょうど良かった。
いや、慎太郎は壺に吸い込まれた…などと、憲太郎には言えんじゃろう?
だから、慎太郎はこっちで知り合ったカワイコちゃんと海外に旅行に行ったことにしてあるんじゃ。
家に戻る時、ゆかりさんにちょっとだけ顔を出してもらうと良かろう。」

「えーーー……」

確かに大変だったと思う。
こんなに長い間、いなくなってたんだから。
その間、じいちゃんは本当のことを言えるはずもなく、気をもんでいたはずだ。



「おまえの携帯から憲太郎にメールを打ったりして工作をしたんじゃが、どうもそれが良くなかったようでな…
警察に捜索願を出すとか言い出しておって…あ、慎太郎!
とりあえず、家に電話しといた方がええぞ。
一言でも声を聞かせておけば、憲太郎も安心するじゃろう。」

「そ、そうだね。」

俺は早速家に電話をかけた。
父さんも母さんもさすがにすごく怒ってたけど、でも、もうじき帰ると言ったら、ほっとしたような声に変わって…



なんていうんだろ……
家族っていいな…なんて……
柄にもなく、俺はじんわりきてしまった。