(やはり、こうするしかないんじゃ…)



わしはついに決意した。
そう、あっちの世界にいくことを……
こんな老いぼれのわしになにが出来るかはわからんが、手をこまねいているだけでは何もわからん。
せめて、慎太郎と美戎がどうなったかだけでも確かめに行かねばならん。



こっちのお金は使えんじゃろうから、金細工の懐中時計と、ばあさんの形見の指輪をいくつか、そして薬に懐中電灯…
あとは着替えを数枚詰めて…と。
慎太郎のことはちゃんと書いておいた。
例の書状の在りかも書いてある。
わしがいなくなったことを知れば、憲太郎があれを読んで、事情を知るじゃろう。



さぁ、行くぞ!
決心が揺らがないうちに…!
なぁに、わしはもう老い先短い老人じゃ。
もし、ここに帰って来られないようなことがあっても、思い残すことなんぞない!
あぁ、なぜ、もっと早くに行動しなかったんじゃろう…



すまなかったな。
慎太郎、美戎…今、助けに行くからな…!



わしは暗い蔵の中に足を踏み入れた。
そして、奥の細い階段を上り……


懐中電灯で照らす先に、あの壺はあった。
これからのことを考えると、やはり身体が震えてきよる。



(さぁ…行くぞ!)



わしは大きく息を吸い込み、慎重に壺の傍へ歩いて行った。
その時……


「う、うぉーーーー!」

「わわわっ!」

「なんだ!?」



今、まさに飛び込もうとしていた壺の中から、おかしな声と共に三人の人間が勢いよく飛び出して来たんじゃ!!