「ほ、本当なのか!?
本当にあんたらは向こう側の世界からやって来たのか!?」

ゆかりさんは目を丸くして驚いた。
でも、この世界の人達は、違う世界があることを認識してるようで、半信半疑ながらも全く信じないというわけじゃない。



「ごめんね。ずっと隠してて……」

「そ、そうだったのか…だから……」

「それでね、向こうの世界に戻る壺には結界が張ってあって、その結界を破るには安倍川家の血が必要だってことがわかったんだよ。
でも、安倍川家の血はもう途絶えてて誰も残ってないって聞いて、それで他に結界を破る方法はないかって調べたんだ。
ほら、僕、長兵衛さんの書庫でずっとこもってたでしょう?」

「あぁ…あの時はその方法を調べてたのか…」

そう言いながら、ゆかりさんは大きく頷く。



「そうなんだ。でも、みつからなかった。
だから、じじいとばばあに聞きに来たんだ。
でも、そんな方法はないって言われた。
安倍川家の家系図も見せてもらった。
それで、153年前に18歳の由香里さんって人が不明になってたことは知ってたんだけど、まさかその由香里さんがゆかりさんだなんて考えてもみなかったよ。」

「そりゃあそうだ。
あたいはかっぱだったんだからな。
……しかし、驚いた。
あんたらがあっちの世界の人間だったなんて……」

「でも、ゆかりさんだって、あっちの世界から来た煎兵衛の子孫なんだよ。」

「あ、そっか……」

ゆかりさんは、どこか照れたように小さく笑った。
……それにしても美人だ。
そこいらのアイドルとは比べ物にならないぞ。
お肌はもちもちだから若いのはわかるけど、落ち着いたところもあるし、口調とは違ってとても品のある顔立ちだ。



「それで、あたいはどうすりゃ良いんだ?」

「うん、壺の傍に建ってるだけで良いみたい。」

「それだけで良いのか?」

「うん、安倍川家の血っていうのは、安倍川家の血筋の者が壺の傍にいれば良いっていうことらしいんだ。
誰でも彼でも向こうの世界に行ってしまったらまずいから、安倍川家…つまりは陰陽師の血を引く者が認めた者だけ行けるようにしたんだと思うよ。」

「なるほどな……」

ゆかりさんは、再び大きく頷いた。