「どないしまひょ。
あても、こんなにかかるとは思てませんでしたよってに美戎をお貸ししましたが、早百合が帰って来たら、あの子がなんと言うことやら……」

受話器から聞こえる小餅さんの声が沈んでおる。



「そ、それで、早百合さんはいつ戻られるんですか?」

「あと、二、三日したら戻って来るみたいどす。」

「二、三日……」



慎太郎が壺の中に吸い込まれてから、すでに一年と少しの時が流れた。
しかし、式神の美戎が慎太郎を探しに行ってくれたから、そのうち戻って来るだろうと軽く考えておったのじゃが、なかなか戻って来ないまま、あっという間に月日は流れた。
小餅さんの話では、美戎は無事にあっちの世界に着いたと言ってはいたが、それをスマホンで確認したという…
まさか向こうの世界から電波が通じるはずもないし何か勘違いをされてるのかもしれんが、わしも機械には疎い。
詳しいことはわからず仕舞だ。

憲太郎は憲太郎で、かなり心配しておったから、わしは慎太郎の携帯を使って憲太郎の携帯にメールを送った。
アリバイ工作のつもりじゃったんじゃが、わしは漢字が打てんから、ひらがなだけで打ったのがまずかったのか、絵文字を無理に使ったのが良くなかったのか、憲太郎は却って不安が大きくなったようじゃった。
じゃから、わしには慎太郎から直接電話があったと嘘を吐き、憲太郎達には合わせる顔がなくて電話をする勇気がないと言っていたと伝えた。
しかし、さすがにもう限界じゃ。
憲太郎は警察に相談すると言い出した。
しかも、悪いことに、小餅さんの孫の早百合さんが戻って来ると言う。



(どうすりゃええんじゃ!?)



いや、そんなことよりも、慎太郎は…そして美戎は無事なんじゃろうか?
二人の身になにかがあったら……



そう考えると、わしの心は不安で押しつぶされそうになってしまった。