「えっ!?じゃあ、君はゆかりさんなの?」

綺麗な女の子は俯き加減で小さく頷く。



帰って来た金兵衛さんがお茶を淹れてくれて、俺達は四人で卓袱台を囲んだ。



「でも…どういうこと?
ゆかりさんはかっぱだったのに、どうしてそれが人間になったの?」

「……あたい……もとは人間だったんだ。
でも、呪いでかっぱにされて……」

「なんと…!!」

金兵衛さんは、目を丸くしてゆかりさんをみつめた。



「どういうことなの?
もう少し詳しく教えて!」

「あたいも最近ではよくわからなくなっていた。
そんなのは、あたいの妄想なんだって思うようにもなっていた。
でも、妄想でもなんでもなかった。
あたいは…本当に人間で……呪いの話も本当だったんだ……」

ゆかりさんだという女の子はそう言うと、澄んだ切れ長の瞳から丸い涙をぽろぽろとこぼした。
美戎は女の子の背中を優しくさすり、指で涙を拭う。



「ありがとう…」

ゆかりさんは、涙を拭い、お茶を少しだけすすると、ゆっくりと話し始めた。



「こんなことになったのは、うちの父上が原因なんだ。
あたいが子供の頃はもちろん何も知らず、ごく普通に育った。
ただ、だんだん大きくなるにつれ、父上や母上の様子が少しずつおかしくなった。
父上や弟子達が、あたいに祈祷ばかりするようになった。
なぜそんなことをするのかと訊ねても、誰も何も答えてくれなかった。
おかしなお守りを身に付けられ、なんだかわからないものを飲まされたりもした。
そして、あたいが18の誕生日…
目が覚めると、みんながあたいを取り囲んで泣いていた。
どうしたのかわからないまま、あたいは起きた。
その時、あたいは自分の身体が緑色になってることに気がついた。
慌てて鏡を見たら、顔が見たこともないおかしなものに変わってたんだ。
そして、あたいは父上から事の真相を聞いた。
父上がまだ若い頃、あるヨウカイと恋に落ちた。
そのヨウカイは見た目は人間の女と少しも変わらぬとても美しい者だったという。
あんたらも知ってるだろう?
最近では少なくなった吹雪女だ。
吹雪女は父上のことを本気で愛したが、父上にとってはただの戯れだったらしい。
父上は、やがて母上と巡り合い、吹雪女を簡単に捨てた。
その時に、吹雪女は呪いをかけたらしい。
おまえにこの先娘が出来たなら、その娘が18になる時に醜いかっぱに変えてやろうと……」

ゆかりさんは話し終えると、小さく息を吐き出した。



「吹雪女は有害種ゆえ、確かに今ではほとんど出会うこともありません。
あのヨウカイは見た目が人間とそっくりなことで問題もよくあったようですが、もめた人間はほとんどが氷漬けにされて殺されたと聞きます。
あんたの父親は殺されなかっただけましでしたな。」

「ましなもんか!
父上のせいで、あたいはかっぱにされたんだぞ!」

ゆかりさんの気迫のこもった叫びに、金兵衛さんは思わず顔を伏せた。