「ねぇ、慎太郎さん……いい加減教えてよ。」

夜も更け、そろそろ寝ようかって時になって、美戎が唐突にそんなことを口にした。



「教えるって…何をだ?」

「だから~…ゆかりさんとのこと。
返事はどうだったの?」

「あ、あぁ、そのことか…
ちょうど言おうと思ってたら、あの龍が現れたから、今日は言えなかったんだ。」

「なんだ、そうだったんだぁ…
慎太郎さんもゆかりさんも全く変わった様子がなかったからおかしいなとは思ってたんだけど……
そう、それは残念だったね。
……じゃあ、明日言うの?
またあそこまで行く?」

「いや、あそこに行ったらまたあの龍が出てくるかもしれないから、もうそのへんで良いよ。」

龍のことで、正直言って、今日は気が抜けたというのかなんというのか…
なんだか一気に熱が冷めてしまったような気がする。

美戎はあんな風に言ったけど、多分、俺達はもう元の世界には戻れない。
ってことはこの世界で暮らして行くってことだから、それならもう告白なんてしないでいた方がお互い変な気を遣わなくて済むかもしれない…なんて気持ちに傾いていた。
告白して、「いや、あたいはあんたには特別な感情は持ってない。」なんて言われたら、やっぱりショックだもんな。
まぁ、それでもゆかりさんのことだから子供達の面倒はみてくれるだろうし、俺達とも一緒にいてくれるとは思うけど、それって却って切ないぞ。
今日、告白するって決めてたのに、龍に邪魔されたってことは、告白しない方が良いってことなんだ、きっと。



「このへんって言っても、なにもなさそうだねぇ…
あ、そうだ、僕、明日は金兵衛さんのお店にでも連れて行ってもらうことにするから、その間に二人で話してよ。」

「う、うん、あ、ありがとうな。」

「もう、慎太郎さん、なにショボくれた顔してるの?
ファイトだよ!」

美戎はそう言って、両手で拳を握りしめる仕草をする。


ショボくれてるわけじゃあないけど、言わない方が良いって思い直しただけなんだ。
応援してくれてる美戎には悪いけど、明日は、また何か適当な言い訳を考えよう。

そんなことを考えながら、俺達は眠りに就いた。