「慎太郎さん、じじいとばばあの山の麓に、綺麗な湖があったじゃない。
あそこで告白したらどうかな?
ロマンチックな場所だし、良いんじゃない?」

「え?あ、あぁ、そうだな。」

「ピクニックに行こうって誘い出してさ。
それで、僕は途中でいなくなるから、その時に告っちゃいなよ。」

「う、うん。」

なんだか美戎の言うままに、告白の手筈は整っていく。



***



「ほら、すっごく綺麗な所でしょう?」

「本当だな。
こんなきれいな湖は初めて見たよ。」

「ねぇ、あそこでお昼ごはんでも食べようよ。」

次の日、俺達は山の麓の湖に出かけた。
最初はあまり乗り気でなかったゆかりさんも、いざ、湖を目の前にすると、なんとなく嬉しそうな表情に変わり、俺はようやくほっとした。



「今日のお弁当もおいしいね。
ゆかりさん、いつもどうもありがとう。」

「たいしたことないさ。
そんなことより、あんたらの故郷はここからまだ遠いのか?」

「……そ、それなら、もう少しです。」

美戎は何も答えず黙々と弁当を食べてるから、仕方なく俺がそう答えた。



「それはそうとゆかりさん、ゆかりさんはこのあたりには来たことあるの?」

「いや、初めてだ。」

「そっか~…じゃあ、これからもいろいろ観光しようね。」

他愛ない会話を交わしながら、やがて、美戎は弁当をすべてたいらげた。



「さて、と。」

美戎はおもむろに立ち上った。

「僕、ちょっと一人で考えたいことがあるから……
しばらくしたら戻って来るからね。」

俺に向かって小さな目配せをすると、美戎は俺達の元を離れた。



「な、なんだろうな。
美戎が考え事だなんて、珍しいな。
ハハハ……」

「誰にだって、悩み事のひとつやふたつはあるんじゃないか?
たまには話を聞いてやったらどうだ?」

「え…?あ、ああ、そうだね。」

なんとなく気まずい雰囲気……
ロケーションは良くても、告白するような雰囲気とは違う。
でも、言わなきゃ!
俺は告白するって決めたんだから。



「えーっっと、ゆかりさん…」

「なんだ?」

「あ、あの…じ、実は、俺……」



その時、湖の方で大きな水音と共に、派手な水飛沫が上がった。