「慎太郎さん、着いたよ。
慎太郎さん!」

「…ん?んん?」



を覚ましたらそこは金兵衛さんの屋敷だった。
そんなに熟睡してたのかと、我が事ながら呆れてしまった。



ゆかりさんも、冷ややかな目で俺を見てた。
美戎も本当に気が利かない。
もっと早くに起こしてくれたら、こんなみっともないところをゆかりさんに見られずに済んだのに。



「あ、あの…俺……」

「夕食、作っといたぞ。」

「おぉ、それは助かった。
早速いただきましょうかのう。」

あぁぁ…これから告白しようっていうところに、今回のことは大きな減点材料だ。



(……ま、いっか。
どうせ、うまくいくはずのない恋なんだから…)

情けないけど、そう思えば少しは心が軽くなる。



「おぉ、おぬし、なかなかうまいではないか。」

「いえ、そんな……」

金兵衛さんは、ゆかりさんの作った料理が気に入ったらしく、次から次にと口に運ぶ。
そういえば、旅をする間に、ゆかりさんの料理の腕は上がったような気がする。



(あ…この芋の煮物……あしでかが大好きだったな…)



そんなことを思うと、懐かしさと寂しさで胸がいっぱいになってしまった。



「……どうしたの?慎太郎さん……」

「い、いや、なんでもない。」

俺は横を向いて涙を隠した。


でも、もしかしたら、もうこんな寂しさは感じなくても済むのかもしれない。
だって、最後の頼みの綱だったじじいとばばあが、結界を破る術はないっていうんだから。
そんなショックなことを自分がなんとなく受け入れてることが意外だった。

俺は自分でも感じてたのかもしれない。
もう元の世界には戻れないかもってことを。
それと、ゆかりさんと子供達の存在のせいだろう。

そうなったらそうなったで、良い…なんて、そんな風に思えるのはすごく不思議な気分だった。