「わぁ!」


美戎がおかしな声を上げ、そして、ゆっくりとばばあから顔を離した。


「残念ながら、もう安倍川家の子孫は残ってないみたいだよ。
最後にいたのが安倍川小雪さんだね。」

「な、なんで、そんなことがわかるんだ?」

「だって、今、ばばあが見せてくれたんだ。」

「見せるって…何を?」

「このじじいとばばあには、二人の知ってることを映像として見せる能力があるのです。
ただ、めったなことでは見せてはくれません。
わしだって、今までに二度程しかなかった。
しかも、基本的にじじいとばばあから情報を教えてもらえるのは陰陽師だけ。
なのに……」

金兵衛さんとじじいが、冷ややかな視線でばばあをみつめる。



「こ、困った者を助けるのは、当たり前のことじゃ!」

「ありがとう、おばあちゃん!」

美戎の言葉に、ばばあはまたも顔を赤らめた。



「では、戻りましょうか。」

「えっ!これだけで?」

「早く山を下りなければ、暗くなるまでに戻れませんからな。」

そう言いきらないうちに、金兵衛さんは二人に手を振り、外に出た。
登りよりは楽かもしれないけど、下りは膝に堪えるもんだ。
大丈夫なのか?俺……







「美戎、すまないな。」

「気にしないで。」

不覚にも俺はどうにもこうにも歩けなくなり、途中から美戎に背負ってもらって山を下りることなった。
疲れと心地いい振動のお蔭で、俺のまぶたは重くなり……


俺はいつの間にか、美戎の背中で眠ってた……