「こんにちは。」

「ややっ!
そなた達はあの時の……それにかっぱ!」

「今日はちょっと話があって来たんだ。」

美戎とゆかりさんは違う部屋で待っててもらって、俺は、一人で金兵衛さんに会った。



「それで、ご用というのは?」

俺は長兵衛さんから言付かって来た手紙を金兵衛さんに手渡した。



「おぉ…あの書物を本当に兄弟子の所まで運んで下さったのですな。
いやぁ、さすがはわしの見込んだお人じゃ。」

そう言って、金兵衛さんは俺の肩を叩いた。
相変わらず、調子の良い人だ。



「ひどいじゃないですか!
壺のこと、知らないだなんて俺を騙して!」

「滅相もない!
おまえさん達のようなお若い方にはわからんでしょうが、年を取ると本当に忘れっぽくなるものなんです。
ここにおまえさんの探してる壺があったなんて、わしはころーっっと忘れておった。」

……しらじらしいったらないぜ。
本当に食えない爺さんだ。



「それで、じじいとばばあのことですが……」

「わかりました。
それなら明日、早速、お連れしましょう。
奴らはこの先の山の中に住んでます。
なぁに、たいした山ではありません。
ところで…さきほどのかっぱは?」

「旅の途中、さむいもに襲われかかったところを助けてもらったんです。
それ以来、一緒に旅をしてて……」

「今時、かっぱが人里に現れるとは珍しいですな。」



その晩、俺達は金兵衛さんの屋敷に泊めてもらった。
夕飯も、それなりにご馳走だったし、俺を騙したことに多少なりとも罪悪感を感じてるのかもしれない。