「どうもありがとうございました。
皆さんのおかげで、ずいぶん早く戻ることが出来ました。」

「いえ。
では、皆さん、お気を付けて!」

彼らのテリトリーの境まで来ると、飛び天狗の四人はまた村に戻って行った。
徒歩なら何日かかかるところを、彼らなら一日もかからず飛べるんだからたいしたもんだ。


「ここからは、出来るだけかごを使って……」

「いや…自分の足で歩いて行こう。」

もしかしたら、この旅を最後に俺達は元の世界に帰ることになるんだ。
だから、かごなんかには乗らず、いろんなことを噛みしめながらゆっくりと進みたいって思ったんだ。
美戎が俺のそんな想いを察したのかどうかはわからないが、反対することはなく素直に頷いた。



***



長兵衛さんの村に着くまで、一年近くかかったというのに、その逆は嘘みたいに早かった。
道をしっかりわかってるってことと、あいつらがいないからだと思う。
最初の頃はあいつらをおぶったり、歩く時もあいつらに合わせてゆっくりとしか歩けなかったからだ。
バイトをしたあの町…大散在してしまった天国…さむいものにあやうくやられそうになったあの道……
最初は全く知らなかった町が、すでに思い出深い場所になっていた。
旅人セットのお蔭で、泊まる所や食べるものも困らなかったし、ちょっと立ち寄ったミマカさんの家では、美戎はまたおこずかいをもらってしまうし。
だから、バイトをする必要もなくて、俺達は半年もしないうちに金兵衛さんの家に辿り着いた。

本当に穏やかな日々だった。
だけど、これからはそうはいかない。



じじいとばばあに会うことで、俺達が元の世界に戻れるかどうかが決まるんだ。
そして、それがどっちだったとしても、ゆかりさんには本当のことを話す。
俺達が他所の世界から来たってことを…
そして、ゆかりさんへの想いを……